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第四章・8

 頬杖をつき、輪は一人になってしまったキッチンに座っていた。  テーブルの上のタブレットに、眼をやってはいない。 「こんないかがわしいもの、とても見られないよ……」  しかし、耳から音は入って来る。  ぴちゃくちゅ、ぷちゅぐちゅ、と淫猥な音が漏れてくる。 「ああ、もう!」  目を閉じ、耳を塞いで、輪はテーブルに突っ伏した。  体は、まだだるい。  それでも無理して、学校へ行けばよかったかな。  そうすれば、こんな思いしなくてもよかったかも。 「学校といえば、山本くんどうしたかな」  リビングへ移動し、ソファに投げ出してある自分のバッグを探った。  スマホには、ラインが届いていた。

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