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第四章・11
授業開始のチャイムの音が、電話口から小さく聞こえてきた。
「あ、始まる。じゃあ、また。お大事にね」
「うん、ありがとう」
電話を切って、輪は考えた。
これは、良いことなんだ。
自死まで追い詰められていた山本くんが、救われた。
そしてそれは……。
『契約は成立だ』
涼宮先生は、約束を果たした。
今度は、僕の番なんだ。
『お前が私のものになると約束すれば、山本の命は保証しよう』
僕はもう、涼宮先生のもの。
輪は、肩を落とした。
もう、逃げられない。
諦めて、輪はキッチンへ戻りタブレットを見た。
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