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第六章 バレンタインデーに愛をこめて
比呂士と輪が出会ってから、一か月近くが経っていた。
そんな、ある日。
と、いうか、2月12日。
「あぁ、忙しい。忙しい!」
先にマンションへ戻っていた輪が、キッチンで何やらバタバタしている。
高校教師としての勤務を終えた比呂士は、ひっくり返ったキッチンに呆れた。
「何をやっている!?」
「あ、比呂士先生。お帰りなさい」
返事になっていない、と悪魔は文字通り角を立てた。
「何をすれば、キッチンがこんなに散らかるんだ!?」
それには真顔で答える、輪だ。
頬に、チョコレートが付いているが。
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