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第六章・2

「バレンタインデーのチョコを、作ってるんです!」 「ほう? 私のためにか」 「いいえ。クラスの皆に、渡すんです!」 「……即答で否定するな」  輪の言い分は、こうだった。  バレンタインデーは、貰える人はいいけれど、貰えない人は寂しい思いをする不公平なイベントだ、と。 「だから公平に、僕のクラス全員にトリュフを作ってあげるんです!」  さも、善いことをしているんです、といった風の輪の笑顔だ。 「ご苦労なことだ。どれくらい作るんだ?」 「一人4個だから、4×40で、160個です」  比呂士は、気が遠くなった。  一人で、160個のトリュフをこしらえるつもりだったのか!

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