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第六章・9

 輪は、口ごもった。  てっきり、この身体が目当てだとばかり思っていたからだ。  比呂士は、頻繁に輪を求めて来る。  断らなければ、毎日。  しかも、数回抱いてやろう、くらいの勢いなのだ。 「もう、ごちそう様かニャ?」  箸を止めてしまった輪に、ネコが訊ねてきた。 「あ、はい。ごちそうさまでした」  もういいな、と比呂士はそこで会話を打ち切った。 「私は先に、バスを使うぞ」 「どうぞ」 (輪は、私のことをどう思っているのやら)  シャワーを浴びながら、比呂士はそんなことを考えた。

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