77 / 159
第六章・9
輪は、口ごもった。
てっきり、この身体が目当てだとばかり思っていたからだ。
比呂士は、頻繁に輪を求めて来る。
断らなければ、毎日。
しかも、数回抱いてやろう、くらいの勢いなのだ。
「もう、ごちそう様かニャ?」
箸を止めてしまった輪に、ネコが訊ねてきた。
「あ、はい。ごちそうさまでした」
もういいな、と比呂士はそこで会話を打ち切った。
「私は先に、バスを使うぞ」
「どうぞ」
(輪は、私のことをどう思っているのやら)
シャワーを浴びながら、比呂士はそんなことを考えた。
ともだちにシェアしよう!