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第六章・13
「静かに席に着け。ん? 今隠したのは何だ?」
とぼけた担任の声に、クラスが笑いに包まれた。
「先生は、もうチョコもらえましたかぁ?」
「いや、まだだ。随時受付中なので、迷っている者は速やかに申し出るように」
今一度、教室が明るい笑いに満ちた。
ただ一人、輪だけが笑顔を凍らせていた。
(そういえば僕、比呂士先生にトリュフ渡してない!)
昨晩、あれだけ心を砕き、協力してくれた比呂士先生。
だのに僕は、その好意に甘えるばかりで、何のお返しもしていない!
その日は一日、上の空で過ごした。
せっかくの、『クラス全員チョコ作戦』も、嬉しさが半減してしまった。
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