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第七章・6
そんなことより、と比呂士はワインを干すとわずかに身を乗り出した。
「明日の放課後、出かけるぞ」
「どこへですか?」
「デートだ」
で、デート!?
輪は、目を丸くした。
「振り返ってみれば、私とお前は愛し合っているはずなのに、そういった恋人同士の触れ合いが極端に少ない」
「愛し合ってなんか、いません!」
「だからそれらしく、外でデートでもしてみよう。映画を観て、ディナーを摂って。そうだ、何か欲しいものがあれば、買ってやる」
「全然聞いてない……」
明日の放課後、中央公園の噴水の前で待ち合わせ。
比呂士は一方的に約束を取り付けると、さっさとバスルームへ行ってしまった。
「いい機会だニャ」
「好きなもの、たくさん買ってもらうニャ!」
ネコに後押しされ、輪もようやくその気になった。
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