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第七章・8

「単刀直入に言います。増田くんのこと、いじめないでください!」  朝、始業前に輪から突然こう切り出された3年生は、面食らった。 (何? 自分から飛び込んで来たってわけ?)  放課後、どうにかしてその身体をいただいてしまおうと企んでいた相手だ。  これなら、労せずに誘い出すことができる。 「ま、今ここで、じゃ何だから。話は放課後にゆっくり聞くってことで、どう?」 「放課後、ですか」  放課後は、比呂士とデートの約束がある。  しかし、待ち合わせは18時30分。  急げば、間に合わない時刻ではない。 「解りました。では、放課後に」  3年生の教室棟から去ってゆく輪の後ろ姿を見ながら、少年はほくそ笑んでいた。

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