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第七章・10

 そんな、と輪の唇は震えた。  人の弱みに付け込んで無茶をする人間は、この2年間で嫌と言うほど見てきた。  それでも、人々のために。  人間界が少しでも良くなるようにと、頑張って来たのに! 「できなきゃ、増田はこれからも俺のオモチャだ」 「これからも、って」  大学生になったら、OBとして部活に顔を出す。 「そしてまた、お小遣いもらったりしようかな、ってことさ」 「やめてください!」 「だったら?」 「だったら……」  解りました、と輪は顔を上げた。 「僕でよければ、好きにしてください」  やったね、と指を鳴らし、3年生は声を上げた。 「おい、聞いたか?」  すると、そこここから隠れていた残りの3人が出てきたのだ。  罠にはめられた、と気づいた時は、もう遅かった。

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