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第七章・15

「遅いな」  比呂士は、懐中時計を出して時刻を確かめた。  18時35分。  約束の時刻を、5分オーバー。 「あいつのことだから、5分前には着いていそうなものだが」  もう少し、待ってみるか。  イルミネーションで飾られた煌びやかな噴水の前で、比呂士はただ輪を待っていた。  デート、か。  そんなもの、初めてするのだ。  釣った魚に餌をやるような真似はしてこなかった比呂士だが、輪に対してはどこか心持ちが違った。  何か、アクションを起こしてみたい。  そして、その反応を見てみたいのだ。  輪は、デートを喜ぶだろうか。  そんな気持ちを温めながら、比呂士は輪を待っていた。

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