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第七章・23
「大丈夫か、輪」
「見ないでください……、見ないで……」
うわ言のように繰り返す、輪。
汚された彼の身体に、比呂士は自分のコートをかけてやった。
「ネコ、輪の持ち物を集めて持って来い」
「ヴェルフェル様、この4匹のアメーバはどうするのかニャ?」
びちゃっ。
びちゃびちゃ、とのたうつ黒いアメーバ。
元は人間だった、4匹の異形のものだ。
「放っておけ」
輪を見ると、気を失っている。
比呂士は、彼の額にそっと口づけた。
そしてその軽い体を抱き上げると、重い足取りで家路についた。
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