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第八章 マリッジリング

「前菜は、ハマグリのカプチーノ仕立て サフラン風味でございます」 「???」  輪は忙しく頭を働かせた。 (ハマグリって、貝だよね。カプチーノは、コーヒー? サフランって、花!?) 「いいから、味わえ」 「い、いただきます」  輪は、カクテルグラスに盛り付けられた料理を、一匙食べた。 「おいしい!」  うん、と比呂士も頷いている。 「ハマグリの出汁を凝縮してサフランの香りをつけた、ソース。ゼリーには、ほんのりフュメの香り。野菜の食感も満点だ」  見た目が美しいだけでなく、確かな味わいを持つ前菜に、比呂士も満足したようだ。  二人は今、老舗の高級ホテルに入っているレストランへ来ていた。

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