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第八章・5
指輪の美しさに見蕩れていた輪だったが、慌ててそれを比呂士に差し出した。
「こんな高価なもの、受け取れません」
「いいから、取っておけ。魔除けだ」
「魔除け、って……」
比呂士自身が、その『魔』なのだが!?
(もう、あんな目に、お前を遭わせるわけにはいかん)
かつて、醜悪な心を持つ4人組に輪は犯された。
4人は魔界送りにし、輪からは悲惨な記憶を消したが、比呂士の胸に刺さった小さな棘は、なかなか抜けなかった。
「どれ、私がはめてやる」
指輪を受け取り、比呂士は輪の左手の薬指にそれをはめた。
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