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第八章・6
「先生、これって人間界ではどんな意味を持つか知ってますか?」
「結婚指輪、とでも言いたいのか?」
私はただ、心臓に一番近い部位に指輪をはめただけだ。
そんな意地悪なこと言う、比呂士先生。
口を尖らせて見せた輪だったが、彼の心の篤さはすでに解っていた。
彼が、誰よりも輪を大事に想っていてくれているかは、解っていた。
「ありがとうございます」
「受け取ってくれるか」
「嬉しいです……」
頬を染め、大切に指輪を手のひらで包む輪は、幸せだった。
誰かが、こんなにも僕を愛してくれるなんて。
その事実が、嬉しかった。
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