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第九章・3

「カフェで寄り道くらい、いいよね」  早く帰れよ、との比呂士の言葉に背くようで後ろめたくはあったが、輪はテラスでカフェラテを飲んでいた。  ふと、体に影が差し、輪は顔を上げた。 「相席してもよろしいですか?」  優しそうな、背の高い男性だった。 「どうぞ」  だが、向かい合って椅子に掛けた途端、男は輪に鋭いまなざしを向けて来た。 「天使候補生108号、だな?」  輪は、息を呑んだ。  僕の正体を知っているということは、この方は天界の眷属! 「私は、お前たち候補生が人間界でどういった行いをしているかを調査する、巡視官だ」  輪の胸は、ドキドキと打ち始めた。

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