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第九章・4

「お前は今、悪魔にたぶらかされている。そうだな?」 「そ、んな」  どうしよう。  何て答えたらいいんだろう。 「始まりはいつだ? どうやって、悪魔はお前に近づいて来た?」  輪は、途中何度も立ち止まりながら、答えた。  担任の先生として、輪のクラスへやってきたこと。  いじめられている友人を助けるために、彼と契約を交わしたこと。  彼の所有物となった今では、同じ屋根の下で寝起きを共にしていること。 「そして、その身体も悪魔によって汚されている、というわけか」 「でも! 比呂士先生はとても優しくしてくれます! 悪魔ですけど、良い人です!」  輪は必死で訴えたが、それに動かされるような巡視官ではなかった。

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