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第九章・5
「悪魔のくせに『良い人』ときたか。魂まで汚染されたか?」
輪は、唇を噛んだ。
どうしよう。
言ってしまおうか。
これ以上、比呂士先生を悪く言わないでください、と。
だが、先に口を開いたのは巡視官だった。
「悪魔の名は何だ? まさか『比呂士』ではないだろう」
「大悪魔・ベルヘル、と名乗っています」
「ベルヘ……、ヴェルフェル!? 大悪魔・ヴェルフェルで間違いないのか!?」
顔色の変わった巡視官に、輪は驚いた。
(比呂士先生、そんなに有名だったの!?)
コーヒーを一口飲んで落ち着いた巡視官は、内ポケットから一枚の羽根を取り出した。
それに彼が、ふうと息を吹きかけると、羽根は見る間に消えて無くなった。
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