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第九章・7

「何かあったのか?」  帰宅した輪に、比呂士はそう訊ねていた。  それほど、彼の顔は青ざめていたのだ。 「何でも、ないです」 「嘘の下手な奴だ」  喋りたくないなら、黙っていてもいい。 「私が当てて見せよう。天使と会ったな」  見開かれた輪の目を見ると、大当たりらしい。 「なぜ、解ったんですか?」 「お前の周囲から、天使の粒子がチリチリしている。中級クラスの天使、といったところか」  輪は、うなだれた。 「天界の、巡視官様です」  そうか、とだけ言って、比呂士は立ち上がった。  そのまま、バスルームへ消えて行った。

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