134 / 159
第九章・11
「あ、あぁ……。あ……、先生……」
余韻にヒクつく輪を優しく腕に抱き、比呂士は囁いた。
「今から、怖い話をするが。いいか?」
「はい……」
「天使候補生は、天界の教えに背くことを仕出かせば、消される」
「消、す?」
そうだ、と比呂士は輪の髪を撫でながら続けた。
「シャボン玉のように、すっかり消えてなくなるんだ」
ふるっ、と輪が震えたようだった。
比呂士は、彼を抱く腕の力を強めた。
「お前が巡視官にすぐさま消されずに済んだのは、大悪魔・ヴェルフェルの寵愛を受けているからだ」
「比呂士先生の?」
「私のお気に入りを取り上げれば、怒りで天界に戦争を仕かけ兼ねないからな」
ともだちにシェアしよう!