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第十章 天界へ
「おかしい」
輪の存在をつきとめた巡視官天使・マヌエルフは、執務室のデスクで資料を前に難しい顔をしていた。
悪魔と姦淫を通じた天使候補生など、すぐに消去の命が下ってもおかしくないはずなのに。
しかし現実は、違っていた。
マヌエルフには待機の命が下り、それ以上でもそれ以下でもない。
「大悪魔・ヴェルフェルの愛妾だからか? 奴の機嫌を損ねるのが、そんなに怖いのか。上層部は」
方法は、いくらでもある。
輪の代わりに、適当な愛らしい妖魔でも準備して、交換するといいのだ。
天界にも、妖魔は棲んでいる。
魔界と行き来できる、器用な連中だっているのだ。
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