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第十章・2
「禁を侵した天使候補生など、なんの価値もないというのに」
マヌエルフは、そこで気が付いた。
「そう言えば……、奴の翼はまだ純白のままだった」
覗き見た、輪と比呂士の情事。
翼を広げて悪魔を誘って見せた、堕天使。
彼の羽は悪魔と契りを交わしていながら未だ汚れず、美しい輝きを保っていた。
悪魔と交われば、天使の羽など見るも無残に薄汚れて行くというのに。
「天使候補生108号、奴は何者なんだ」
システムに保存された輪のデータを、マヌエルフは細かくチェックし始めた。
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