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第十章・9

「強固な門の向こうからでしか攻撃できない、腰抜けめ」 「何ぃ……」  やたら芝居がかった口調や身振りを、マヌエルフは馬鹿にされている、と受け取った。 「悔しかったら出て来い。卑怯者」 「くそッ!」  門から出ようとするマヌエルフを、周囲の天使たちが必死で止める。 「マヌエルフ様、ここは我慢なさってください!」 「今、大天使様が到着なさいますから!」 「裁きは、お任せしましょう!」  大天使様、との言葉に、マヌエルフの眉がつり上がった。 「大天使様のお力を借りずとも、私の手であんな悪魔一匹葬ってくれよう!」  マヌエルフが門から飛び出しその姿を現すと、比呂士は虫けらでも見るような眼で彼を見た。

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