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第十一章・8

「今回を逃したら、次の生まれ変わりは300年ほど後になるのだが」  肩を落とすアウレリオを、比呂士は茶化した。 「瞬きする間に時は過ぎる。まぁ、300年後にヒトがまだ今の生活を続けているかは疑問だがね」  仕方がない、と大天使は最後に輪へ願った。 「魔界へ行っても、時には人間界の様子を見てやってくれないか? 何せ放っておくとすぐに暴走する種族だ。ヒトと言う生き物は」 「解りました」  それを最後に、比呂士は輪の腕を引いた。 「長居は無用だ」 「はい、先生」  二人揃って羽を広げ、こんどは下へ下へと飛んだ。  降りながら、輪は比呂士の言葉を思い出していた。 『こちらの都合では、輪は今後1年間人間界で暮らし、高校卒業後は魔界で私と楽しく過ごす事になっている』  ありがとう、比呂士先生。  そして、さようなら、天界。

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