4 / 24
第4話
「今日は……と」
一通りの掃除を終え、書庫へと足を踏み入れたチカは、書棚にある沢山の本を眺めて顔を綻ばせる。
チカには無いが、ハルには月に一週間ほどの発情期があり、その間はほとんどの時間をベッドの上で過ごしているから、彼の相手が嫌という訳ではないけれど、こうして一人で過ごせる時間が今はとても嬉しかった。
この書庫には、読み切れないほど沢山の本がある。
チカの知らない言語で書かれた本しかないが、文字はハルから教えてもらい、少しは読めるようになった。手の届く範囲にチカが読みやすい本を集めてあるのは、きっとハルの仕業だろう。
――僕は……どうしてここにいるんだろう?
ページをめくり、考えるけれど答えは本には載っていない。
ハルに拾われてここで暮らしているけれど、それも数年前からのことで、それ以前の記憶がなかった。だが、それすら今のチカにとって、たいして大きな問題でもない。
もちろん、最初はすごく怖かった。
だけど今は、優しい家族とおいしい食事、求めれば本も娯楽もある。これ以上を求めるなんて、優しいハルに申し訳ないと思うようになっていた。
読むのは大抵図鑑の種類で、自然の成り立ちや植物の名前、星の動きや地球のこと、そこに生きている動物のこともチカはこの部屋で学んでいる。
実際に見て触れてみたいと思うこともあるけれど、チカにとって外は危険な場所だとハルが言うものだから、拾ってくれたハルのためにも我が儘はとても言えなかった。
「……あれ?」
一時間ほど読書をしていると、ふいに風が頬へと触れ、どこかの窓が開いているのかと思ったチカは本を置く。
ともだちにシェアしよう!