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第6話

 *** 「助かりました。ありがとうございます」 「いや。当然のことをしたまでだ」  頭を下げる町長に答え、ハルは小さく息を吐く。  嵐の被害がそこまで大きくなかったことは知っていたから、街へと降りる必要もないと思っていたが、いざ買い物に訪れてみると、さまざまな願い事をされた。  どうやら、今朝がた小型の竜巻が起こり、被害が大きくなったようだ。 「そろそろ日も暮れます。今日はこちらに泊まられてはいかがでしょう」 「いや、馬は置かせてもらうが、私は帰る」 「そうですか。承知しました」  力を使えば半刻もせずに帰れることを知っているから、町長もしつこくハルを街へは引き留めない。  握手を交わし、ハルがそこから立ち去ろうとした丁度その時、「あの、神様」と子供の声が足下から聞こえてきた。 「なんだい?」 「これ、お礼です!」  地面へと片膝をつき、そこに立っている少女と目線を合わせてハルが尋ねると、淡いピンクの花冠が目の前へと突き出されたから、ハルは一瞬目を見開いて、それからふわりとほほえんだ。 「ありがとう。大切にするよ」  壊さぬよう丁寧に受け取り、少女へと軽く手を振ってから、ハルは立ち上がり空を見た。だいぶ陽が落ちてしまったから、早く帰らねばチカが心配をするだろう。 ――いい土産ができた。  荷物の入った袋を担いでハルは空へと舞い上がり、屋敷のほうへと急いで飛んだ。

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