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第8話
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「君は……神という種族がこの世にいるのを知っているか?」
精悍で美しい顔立ちは、ハルと似ている気がするが、纏う雰囲気は彼のほうが柔らかいように思われた。
竜族と人間とがこの世界にいるということは本で学んで知っていたが、神という種族は聞いたことが無い。
だから、震える声で「知らない」とチカが答えれば、驚いたように瞬きをして、それから彼は神についてチカへと説明してくれた。
ハルは人間ではなく神と呼ばれる種族であること。この屋敷の周囲は彼の結界に護られていること。そしてこの一辺の土地を支配し、時には守っているということ。
「神は人には無い力を持つ。神は全て男と決まっているが、人間の女と交わることで子を成すことができる。生まれてくる子供は人間と決まっているが、普通の人間よりも強く優秀なものが生まれる。だから、発情時期には抱かれたい女性を招き入れるのが通例だが……どうやらハルは一度も結界を解いたことがないらしい」
言っていることの半分ほども理解できてはいなかったが、ハルが自分と違う種族であることは、なんとなく理解ができた。
「分からないって顔をしてるが、それも仕方ない。君は……とても特殊な存在だ」
もっと分からない男の言葉にチカが首を傾げると……「すまない」と謝った彼は、微笑みながら手のひらで額へ触れてくる。
「べつに結界を解かないことはそれほど問題じゃない。神は長生きだからね。それより……君は、ハルのことが好き?」
問いかけに、チカが何度も頷くと、少し悲しげな顔をした彼が「そう」と呟きため息をついた。
「黒の一族の生き残り……か。綺麗な色だ。少し見るだけのつもりだったが……気が変わった」
掬い取られた髪へとキスをされ背筋を冷たいものが走る。払い退けようと手を動かすが、手首を掴まれ阻止された。
「少しだけ味見をさせてもらうよ」
チカの着ている綿のスモックのボタンを器用に外しながら、さっきまでとは全く違う淫靡な笑みを男が浮かべる。
「やっ……ううっ」
「大丈夫。気持ちよくなるだけだ」
暴れて抵抗しようとしたが、男の赤い瞳を見たその瞬間……体から力が抜け落ちた。
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