「な……やぁっ」 　ハルが吠えたのだと理解するよりも早く体が逃げを打つ。怖いからというよりも、本能的な行動だったが、少しだけ前へ這ったところで背中を押さえ込まれてしまった。 「うぅっ……ぐ」 　あっという間に衣を裂かれて尻を左右へと引っ張られ、剥き出しになったアナルの中へと外気が入り込んでくる。 「や……あっ」 「朱くなってる。ファネスのモノをくわえ込んだのか？」 　顔を見るのが怖いから……首を左右へと何度か振ると、彼の長くて太い指先がアナルの縁へと這わされた。 「うっ……うぅ」 「ひくついてる。こうやってアイツを誘ったのか？」 　言っている意味が分からない。ハルが触れたらこうなるのは、チカにとってはいつものことだ。 　家族であれば当たり前に教える行為なのだと言われ、チカがここにきて最初の冬、ハルは自慰を教えてくれた。 　そしてそれは、成長していく課程で徐々に深い行為になっていき、三年ほどがたったある日、初めて後孔で彼の灼熱を受け止めた。 　発情の都度(つど)、彼が我慢をしていることを知っていたから、役に立てたことが純粋に嬉しかったのを覚えている。 　ハルの手はいつも優しくて、気持ちが悦くて、深い愛情に満ちていたから、家族になれて嬉しかったし他にはなにもいらなかった。 　チカにとってはハルが全てで、興味はあっても彼に危険だと言われた場所へは絶対に行かない。 　ハルが仕事で街へと行く間、一人の時間は寂しかったが、帰った彼から街の様子を聞くのがいつも楽しみだった。 「……かんない、わかんないよ」 　誘うというのがどういう意味かは分からない。 　けれど、彼の声音から良くない事だというのだけは伝わった。 「ヴッ……ああっ！」 　チカの声には答えることなく、メリメリと狭い肉をかき分けて侵入してきた彼の性器に、悲鳴を上げて痛みに悶え、力なくラグを引っ掻いた。 　こんなことは初めてで、意識を飛ばしそうになるけれど、何度か尻を手のひらで叩かれ現実へと引き戻される。 「いたいっ……いたい！」