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第18話

 発情期でも無いのにどうしてこの行為をするのかも、何故こんなに痛いのかも、分からないからチカは叫び、ハルの顔を見ようとするが、頭を床へと押さえつけられて振り返ることはかなわなかった。 「ハル、ハルっ」  嗚咽しながら名前を呼ぶが、やはり彼は答えない。耐えきれず、必死に前へ逃げようとすると、髪を引かれて首筋へ歯を立てられた。 「ヒッ……くぅっ!」  その途端、ビリビリとした熱が背筋へ降りて、体中へと鳥肌がたつ。 ――怖い。  心を通わせて以降初めてハルを本気で怖いと思った。  なのに、前立腺を潰すかのように浅い場所を何度も擦られ、チカの性器は硬くなる。 「全部……忘れてしまえ」  ようやく聞こえたハルの声音は、抑揚も無く冷たいもので――。 「うぅ……たすけ……たすけて、ハル……ハル、怖いよ」  助けを求める相手が他に浮かばないから、矛盾していることにさえ気づかず、チカはハルへと助けを乞う。  チカが困った時には必ずハルが手を差し伸べてくれた。孤独に震えていたチカに、何度も家族だと言ってくれた。 「ハル……」  激しい目眩と吐き気に襲われ、チカはとうとう胃液を吐きだす。 「……チカ、ここにいる」  すると、空気が僅かに緊張をゆるめ、ハルの動きがピタリと止まった。  それと同時にフワリと体を包み込まれ、チカは体を戦慄(わなな)かせる。確かにハルの温もりなのに、震えがまったく収まらなかった。 「ハル、ハル……たすけて」  壊れたように何度も名前を呼ぶうちに、途切れ途切れの映像が……白んだ視界に映り込む。  それは、かつて一度も見たことのない、涙を流すハルの姿で――――ハル……泣いてる? 「うっ……ぐぅっ!」  振り返ろうとした刹那、後孔の奥まで深く穿たれて映像は消えてしまったけれど、悲壮なハルの表情だけは頭の中へとこびりついた。  *** 「いく…いくっ」  目下(もっか)で喘ぐチカの黒髪に何度もキスを繰り返しながら、溢れる衝動を抑えることなくハルは腰を打ち付ける。  頭の中ではチカに落ち度が無いと理解していても、怒りの余り、自分自身を抑えることができなくなった。 「ハル、ハル……」  こんな時ですら自分に助けを求めるチカが愛おしく、同じくらい、彼の求める優しい『ハル』に嫉妬する。

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