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第22話
しばらくキスを繰り返していたが、息継ぎの合間に廉がかすれた声で囁いた。
「抱いて、巽」
「廉?」
「マスターの、死を。乗り越えたいんだ」
強く、身体を擦り付けてくる廉。
抱きしめてくる腕が、愛しい。
迷うことなど、なかった。
廉のためになるのなら。
それで廉が少しでも救われるなら。
キッチン隣の、リビングのソファの上に廉を横たえた。
シャツのボタンを外してはだけ、ジーンズのジッパーを下ろした。
以前の俺なら、のぼせ上ってしまうところだろう。
でも、廉と同じに、マスターを知っている俺。
あの人なら、のぼせ上ったりしない。
ただ落ち着いて、廉を大切に扱うに決まってる。
だから、大人の態度で振舞った。
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