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4th symphony

「や......だ.......もう、やめ」 後ろにぎっちり縛られた手が痛い。 両足は恥ずかしくなるくらい広げられて、閉じることすらできないように縛られて。 椅子から動けない。 その人は僕のそんな姿を、優しい目で眺めたり。 たまに僕の中に指を入れてくる。 僕が感じるとこを指で弾いて、刺激したり。 かと思えば、甘いキスをしてくる。 乱されて.......。 あり得ないくらい、濡れてくる。 そしてまた、長い時間、僕を眺めるんだ。 ........優しく、笑いながら。 見つめられてるだけで、溢れるくらい濡れてきて。 情けないくらい、イきそうになる。 .........もう、どれくらい。 どれくらい、こんなことしてんのかな、僕。 いくら......いくら。 お金のためとはいえ。 目の前の人に心惹かれたとはいえ。 僕は、なんてバカなことをしたんだろう。 日の当たる場所からほど遠い.......日の光さえも見えない。 僕はそんな場所に自ら落ちて、もがいてる。 後悔と悔しさから......涙がでてくる。 「泣き顔も、キレイ」 「......や、だ......由悠季......」 唇が......かさなる......。 触れただけで、舌が絡んだだけで、おかしくなりそうなくらい感じて、口の締まりも悪くなりそうだ。 「ん......ん..あ....はぁ」 「なんだよ、すっげぇやらしい顔してんじゃん」 そう言って、僕のをぎゅっと握って擦り出すから......苦しい.......イきそう.......。 「うっ.......うぁ......やぁ」 「体は正直だね。イヤがってるのに、イヤがってない」 .........だめ.....だめ、あっ.......あぁ。 気が遠くなりそうなくらいの虚脱感。 僕は、どうにかなっちゃいそうだ。 もう、ほっといてほしい。 僕に触らないでほしい。 僕を見ないでほしい。 そんな願いも叶うことなく、こっぱみじんに砕けちる。 由悠季が僕の中にまた指を入れて、さっきのところを指で弾く。 体がビクつく。 声が、上がる。 意識が、遠くなる。 「あ...やぁ.......」 「そろそろ、かな?」 僕は、ゾワッとしたんだ。 由悠季の優しかった目が、あまりにも冷たく見えて。 なんでかな.......。 なんで、こんなことになっちゃったんだろうな.......。 「絵のモデル?いやいや、無理だよ。僕、ガリガリだし」 バイト先で知り合った由悠季は、大学で美術を専攻していると言った。 同い年なのに、物腰が柔らかで。 僕とあんまり身長はかわらないのに、肩幅が広くて〝細マッチョ〟みたいな。 かたや、僕はというとガリガリでさ。 全く魅力的な身体をしていない。 そういう絵のモデルって、体のジャンルが違うと思うんだよ、本当。 「だから、言ってんだけど」 「え?」 「いつも筋肉隆々な石膏像が相手だから、正直飽きちゃってんだ。しゃべらないから意思疎通もできないし」 「そりゃそうだろ」 「卒業制作で何点か描きたいんだ。聖、お願い!気軽に頼めるのって、お前しかいないんだよ」 「.......えー」 「バイトだと思ってさ。もちろん、タダでとは言わないからさ」 その言葉に、クラッときた。 そして、仔犬みたいな顔をして僕をみる由悠季を突っぱねることができなかった。 「........わかった。いいよ」 「ありがとう!!聖っ!!」 「で、僕はどうすればいい?」 「明日、明日俺の部屋に来てよ!!」 「わかった。じゃ、また明日」 そう言って、僕らは別れて。 僕は今日、由悠季の部屋に行ったんだ。 由悠季の部屋は、部屋がいくつもあって。 とても大学生の一人暮らしの部屋とは思えないくらい広くて、立派で。 正直、面食らった。 〝親、金持ちなんだろうなぁ〟、なんてゲスな想像をして、〝じゃあ、なんでバイトなんかしてるんだろう〟って、疑問がわいた。 金持ちの暇つぶし、なんだろう。多分。 「集中して絵を描く場所がどうしても欲しかったんだよ」 「でも、僕ん家の5倍くらいありそうだよ、マジでさ」 由悠季は、僕の言葉に優しく笑うと、「外は暑かったろ?」と言って麦茶を差し出してきた。 「うん、ありがとう」 今日は本当に暑くて、由悠季が差し出した麦茶が本当にありがたくて、早く喉を潤したくて、麦茶をがぶ飲みした。 ........あれ? ........視界が、歪む........? 壁に飾られた、抽象的な絵とか。 原色に近い赤色のテキスタイルのタペストリーとか。 グルグルまわって.......。 昔見た、映画の。 スタンリー・キューブリックの「アイズ ワイド シャット」のワンシーンみたいな.......倒錯的な感覚がして。 僕は、そこから記憶がない.......。 「あっ!!......んうぁっ!!.....やぁ.....」 気がついたら、僕は椅子に縛り付けられていて、足を大きく広げられていて。 今........僕の中を由悠季が犯してる.......。 気持ち悪いはずなのに。 胃がムカムカして、胃液が逆流しそうなのに。 僕の奥を突き上げる由悠季のソレが、全身を貫くような激しく乱して、堕ちてしまいそうなくらい。 .........気持ちいい。 体が、しなる。 体が、震える。 イヤな、はずなのに........つい、力が入ってしまう。 「......っ!!.........そんなに、締めるなよ」 「.......やぁ、やぁ!!」 「やべ.....!!.......イきそう!!」 「.....んぁ.....あ.......はぁ....」 「.........はぁ、はぁ、聖......」 何も、考えられない.......。 僕は、一気に何もかも飛び越えてしまった気がした。 由悠季は、そんな僕に優しくキスをする。 中から、あったかいものが溢れ出す感じがして、僕は、なんとなく、その感覚をたどっていた。 「やっぱり、思ったとおり。聖は、綺麗だ」 由悠季はそう言うと、イーゼルの前に座って、僕をデッサンしだした。 もう、何の感情も感覚もしない。 はっきりしない頭とうつろな目で、楽しそうにデッサンする由悠季を、ただ、ただ、見つめていた。 「中性的な魅力だった聖が、青年に心を奪われて淫らになるサロメみたいになって.........さらに綺麗だ.......。 純粋無垢な顔なのに、表情はやらしくて.......たまらない。 陽と陰の、symphony........って感じがする」 .........由悠季。 君は、1つ間違ってる。 僕には、もう、陽は存在しない。 深く沈んだ闇に投げ落とされて、陽すら掴めないんだ。 僕は、身も、心も。 由悠季の闇に堕ちてしまって。 僕の耳には。 静かな.......暗闇のsymphonyが聞こえてるんだ。 深く暗い、symphonyが。

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