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第42話

-漣-  好きだ。愛して欲しい。それしか考えられなかった。市販のビスケットを袋に入れて砕いていく。勃つか分からない。勃たなければ勃たせればいい。粉末にならない程度にビスケットを砕いてから溶かしたバターと混ぜて型に押し込む。冷やしている間に新たな材料を用意しなければならなかった。息が上がる。部屋に戻って集中する。案じる必要もなくそこは昂っていた。口の中の温かさと柔らかさは不本意ながらもその部位(ばしょ)()うに知っていた。それでも自らの意思で侵入(はい)った口の中は指が溶けるくらい柔らかくて、漏れる声は可愛かった。愛らしい姿ばかりが浮かんで前を扱く手が速くなる。可愛くないところなんてなかった。しっとりした腋から薫る汗の匂いも、形の良い小さな臍も、生えてないといってもいい疎らな陰毛(ヘア)も、薄い皮から控えめに覗く(プラム)のような先端も、桜桃(さくらんぼ)みたいに揺れる袋も、蓮の蕾に似た慎ましやかな窄まりも、脳天から爪先まですべてが可愛かった。何故今までそれに気付かなかったのか、俺は俺を信じられない。俺はこの分野(こと)盲目(めくら)耳聾(みみつんぼ)白痴(ばか)だった。どうしてあれだけ傍に居て、もっと早くに気付かなかった。緋野よりもずっと前から傍に居たのに。 「っ…しょ、うた…っ、」  可愛い。可愛い。可愛い。すべて可愛い。礁太の可愛いさを数えるたびに快感が溢れた。熱くなる。まだ出したくない。まだ礁太で気持ち良くなっていたい。ただこれは自慰(アソビ)ではなくて、材料を採るための行為だった。目的を忘れかけて緩めていた手をまた素速く往復させる。礁太をレイプしていた時の可愛らしく鳴いて腹を引き攣らせる姿で射精する。俺の肉体(カラダ)で目を潤ませて焦って鳴いて痙攣するのが嬉しかった。最後まで搾り取る。自分の精液(モノ)など見たくはなかったが小皿に溜まるのを見届けた。好かれたい。あの声で好きと言われたい。愛されたい。直腸だけでなく胃からも俺を吸収して欲しい。疲労感に襲われるが俺は服装を整えてまたキッチンに戻る。俺の身体の中のものをあの小振りな唇が食む。柔らかな口内で咀嚼されて、俺の咥えた喉を通って。また出したくなる。だが控えないとならない。すべて礁太に食べさせる。俺に汚されたらいい。クリームチーズ、砂糖の代わりに湯煎したホワイトチョコレート、蜂蜜は指定の半分、卵液、薄力粉、生クリーム、俺の精液、レモン汁、レシピにはなかったがブルーベリージャムを混ぜ合わせてビスケット生地を敷き詰めた型に流し込む。礁太に好かれたい。愛されたい。礁太に食べられたい。あの無邪気さとひとつになりたい。型を軽く叩き付けて空気を抜いてからオーブンに入れた。焼き加減を眺めながら頭の中はまた礁太のことでいっぱいになって下腹部が張り詰めた。出したい。赤くなっていくオーブンに照らされる。出したい。礁太の(とろ)んだ口の中の感触がまだ指先に残っている。 「しょ……た、……っ、」  オーブンの中で焼けていく様を見ながら俺はまた昂りを扱いた。キッチンで、情けなく。俺の身体から出たものをあの可愛らしい唇が食べる。細い喉が飲み込む。薄い腹に入っていく。想像するだけで熱くなる。チーズケーキだけでなく俺も焼かれて、礁太に食われたい。柔らかくて甘い唇が俺の血肉で汚れたらいい。子供みたいな手で骨の髄まで舐め尽くされたい。無邪気な顔で美味いと言われたい。肯定されたい。受け入れて欲しい。 「礁太……礁太、しょうた……っぁ、」  オーブンの窓に俺の精が飛んだ。カラメルソースみたいに外からも掛けたい。量が多ければ多いほど礁太は俺を食べる。でも生は良くない。キッチンペーパーで礁太に食べさせたかった甘味の核を拭いた。 -泉-  のっちは仲の良い友達が飛び降りて大分参っちゃってた。言うても家族じゃないし他人じゃん?なんでそんな親身になれるのかすごいなって思った。何か突破口が要るんかなって思って惰性みたいに部活に顔出したのっちをいつもみたいに膝に乗っけた。のっちは気分じゃないって嫌がったケド、要はそういう気分になりゃイイんだもんな。のっちは軽いしチビだしチビでも他のチビより可愛げがあるから(いじく)るのが楽しい。(ゆかり)に可愛がらて羨ましいよな。縁もこんな感じで触ったのかな。縁が感じた感触を知りたくてぼくものっちのあっちこっち触った。肉ないけどなんか柔らかい。でもやっぱり男なら性的対象外(オトコあいて)でも狙うは胸部(おっぱい)でしょ!のっちの平たい胸部(おっぱい)を触りまくった。掌にぷつって乳首(びーちく)がぶつかる。女のよりは小さい。 「やだ、泰ちゃ…ほんと、そうゆう気分じゃ…」  ぼくの膝の上で暴れるから咄嗟に押さえちゃって抱擁(ハグ)してるみたいになった。今日は王子様まだ来てないみたいだからまだのっちと遊べる。ぼくはのっちがそーゆー気分じゃなくても触りたいんだもんよ。 「そうゆう気分じゃ、ないんだってぇ……」  乳首クリクリしたらのっちのカラダは強張った。気分じゃなくても感じるんじゃないの。抱っこ嫌いな猫みたいにカラダ捻って抵抗する。乳首またピンポイントでクリクリすると膝がちょっと痛くなるくらいにのっちはびくびく動く。 「ぁっ…、」  のっちは見た目チビで中身もガキで手足細くて猫みたいで身軽でサルっぽくて小型犬(わんころりん)なのにたまぁにドエロいから困る。ギャップ萌え?AVでM男がやられてたみたいに乳首押し潰す。スポーツウェアを押し上げてて眼福(がんぷく)ってゆーのか?ちんこに響いた。じゃあ股福(ちんぷく)だ。 「んっ、ぁ…っ」 「そーゆー気分なってきた?」  いやでものっちがそーゆー気分になってどうすんの?女ならそのまま()っちゃうケド。霜霧(しもきり)が「やめてやれ」って言って、キャプテン命令じゃ仕方ない。この人のっちのこと好きだからね。ぼく知ってるんだ。本当はC組の王子様のコトも気に入らないんでしょ。どーせこの声思い出して夜な夜なシコってるクセに。モテるクセにオカズはのっち。カワイソ。部長もなんかのっちのこと…げぇ!ホモばっか。人助けしてあげるよ、じゃあ。 「勃っちゃいそう?」 「勃っちゃうから…も、やめぇ…っあっ」  うんうんしてるのがなんかやっぱカワイイ。でもカワイイたまにちょっとドエロいくらいで、シコりたいとまでは思わないかな。ぼくはのっちのちんこ揉む。でもそんなに乳首ほどの反応じゃなかった。ちんこより乳首感じるってなんか逆にヤバいな。 「あっ…触っちゃ、や…っ!」 「王子様に怒られちまーかな?」  んでキャプテンに怒られてぼくはのっちを放しましたとさ。でも王子様が来て、のっちに早く行ってやれよってドヤしたのにのっちは行きたがらなかった。痴話喧嘩?モテる男にモテて付き合ってるのもモテる男で痴話喧嘩たぁ贅沢だね。とはいっても流石にマジで付き合ってはないと思うケド。あの落っこちた子もこの前コクられてんの見たし、同クラの女子も優しいとかカッコイイとか言ってたの聞いた。ま、どいつもこいつもぼくほどじゃないね。 「礁太、帰るぞ」  C組の王子様が部室を覗いた。なんか笑ってたけどそれが後ろから頬っぺた引っ張るみたいな、わざとらしいっつーか硬い、違和感のある笑い方で心霊写真みたいだった。のっちは嫌がって、Gを見つけた時みたいに逃げてぼくの膝に向かい合うように乗っかった。手首のミサンガを触られる。のっちがくれたやつ。近所の津島神宮とかいうのところに売ってたとか言ってたケド。 「どした?」 「美潮、やだ」  王子様がイヤじゃもう誰もムリなんじゃね。っつーかガチのマジで付き合ってんの? 「礁太」  笑顔めちゃくちゃ怖いケド、声とか優しかった。なんかもしこれマジで付き合ってたら痴話喧嘩のダシにされてるくね。マジで付き合ってる? 「一緒に来て」  のっちはぼくを見上げた。なんか、別に女っぽくはないケド、男なのに、カワイイんだよな。ぼくC組の王子様のことよく知らないんだケド。 「ダメだって。おふたりのおアツい仲を邪魔できませんて」  前から乳首を摘んだ。ぷつってしてるのがホントにやらしい。ちょっと虚ろな目をしてのっちはだらしなく口を開いた。 「ぁあっ…」  キャプテン括弧笑(かっこわら)がぼくを睨むからのっちが着替えられるよーに手を離した。ヤキモチ焼くなよ、王子様が到底(とーてー)叶わない恋敵(やつ)だからって。男同士で恋敵(ラブネミー)とかきめぇな。裸になるのっちの骨浮かんでる後姿をぼくは見てた。霜霧もガン見。毎日オカズにされてんのにも気付かないんだもんな。ってゆーかぼくがみんなのオカズに興味あるみたいでゲロキモだった。なんで野郎のシコり事情なんて勘繰らなきゃなんねーのかな。 「礁太…」 「今行くって!うるさいな!」  珍しーことにのっちはキィキィ怒ってた。ヒスった女みたいに。これは結構王子様と深い仲だわ。のっちは着替え終わって落ち込んだ声で下校(バイバイ)した。王子様とマジでデキてんのかな。興味が湧いてなんとなく探偵ごっこをしてみたくなった。連行されるみたいに腕を引っ張られていくところは仲イイって感じじゃなかった。駐輪場の奥の大講義室があって屋根みたいになってから天井低い粗大ゴミ置き場とか用務員さんの道具しまってあるところに入っていった。フジュンイセーコーユーがダメだからってジュンホモコーユーはしていいのかよ。霜霧(しもきゅん)泣いちゃいそう。のっちのあんあん言う声でも聞いておくか…って思ったケド。 『食え!残しただろ!』 『やだ…!やめ、っ食べたくな、ァっ』  喧嘩してるみたいで、食べるってなんなんだろな。多分だけどちんこじゃね。学校でフェラさせるとかエゲつないな。のっちのフェラか。のっちの口柔らかいんだよな。角度もいいし。この前ムラムラしたからチュウしたケド。 『食え!食べなきゃ駄目だ。許さない』 『おかしいよ美潮…変だ。やめ、やだ…って!ぁ…あ、あ』  のっちの友達が落っこちた日もこんな騒ぎあったな。死んだんだっけ? 『あ…んぁあ…』 『ちゃんと食べろ。俺のこと好きになれ』  少女漫画じゃん。縁もなんか王子様のコト好きっぽいんだよな。ぼくのほうが王子様なんだケドな?女ってホント、線が細くて髪さらっさらで生っ白いチン毛も腋毛も生えてなさそうなの好きだから困る。(ひぐま)系が好きってゆーからぼくは髪チリッチリにしたのにそういうクマさんじゃないって言われてフられたしすぐ元に戻って傷むだけ傷んだ。ぼくのことフる口実で、ホントは王子様みたいな「そうめんかキャベツちか食わないんですぅ」みたいなのが好きなんだろ。なんかアタマきた。男性性(オトコ)品位(かち)(さげ)るんだよな、そーゆーの。 「あのさぁ」  壁に押し付けられて口の中に白いもの詰め込まれてるのっちが涙目でぼくを見た。チーズケーキ?カスタードパイ?なんかそんな感じの黄ばんだ白。王子様はぼくを一回だけ見てまたのっちの口に手掴みでケーキみたいなのを詰め込んでる。フツーこーゆー場合手、止めね? 「何してんの?」  のっちは動こうとしたけどまだパイかなんかが入ってる口に指突っ込まれて壁に押し付けられて動けなくなってた。あ~、分かるわ。 「そーゆーことするからさぁ、のっちの友達落っこちたんじゃねぇのー?」  これはベランダから落っこちたくなりますわ。王子様もこっち見たし、のっちも暴れながらぼくのほうを見た。縁も本調子じゃないしさー。自殺らしいケドそれじゃ仕方ねぇじゃん、部外者にやりようねぇもん。ぐすぐす聞こえてのっちは王子様の腕掴みながら泣いちゃった。 「あーあ、泣かせたー」  王子様はケーキかなんかで口の周り汚れてるのっちを抱擁(ハグ)してそのまま2人で座る。キモ。ぼくこーゆーキモいのはまじまじ観ちゃうタイプだからもっと近付いた。王子様が地面に置いたケースみたいなのに綺麗に切られたチーズケーキ入ってた。 「ってゆーか手作りお菓子?男同士で?キモくね?男がケーキとか作んなよ。カマ(くせ)。やっぱアンタってさ、カマなん?ちんこ生えてんの?見せてよ」  流れというかコトバノアヤで言ったケド、別に野郎のちんこは見たくないデス。野郎のちんこっていうか、まぁ女にちんこはないケド。揚足取られんじゃねって思った。でも王子様はこれっぽっちも聞いてなくてのっちのこと撫でたりチュウしてたりしてゲロ吐きそうになった。チーズってゲロの味に似てるよね、ピザとか。トマトと合わさると特に。酸味が。王子様はのっちの傷みまくっま髪の毛に頬擦りしてた。のっちのゲロも食いそうだしのっちの髪の毛で糸楊枝とかしてそう。今日のオカズGETじゃん。カッコイイとかイケメンとか付き合いたいとかカレシにしたいとか言っても王子様だってシコシコしてんだよ、噂じゃカマらしいからシコる陰茎(モノ)あるのか知らんケド。縁もその辺分からないんじゃお子(こちゃま)だよ。

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