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第60話

-泉-  怖ー。1回ガチめのセックスして、あの女男みたいな腋も口も尻も足の裏も臭くなさそうなイケメン美男子ハンサムガイの王子様、みしナントカ…三島?ミシ山?ミシ橋?ミシ林?とにかくミシなんとかの交際相手(おきに)寝取れてラッキーウッキー超元気ーってカンジだったのに、ぼく、のっちのコト、気になってマス。気になってマスかいてます。1回抱いた相手(おんな)ってつまらないじゃん。ああもう陥落(こーりゃく)したなって具合に。別に勃たなくなるワケじゃないけど。別体位(こっち)もイけるクチかって新しい発見だの開発の伸び代はあるにせよ。このクチって卑猥(ヘン)なイミじゃなくて。そうじゃなくて、ヤったかヤってないかっていう単純な線引きでの制覇(コレクター)魂の問題で。のっちはその制覇する項目には入ってなかった。だって女の子じゃないし。誰かと付き合ってるなんて知らなかったし。なんならのっちが女の子と付き合って、その女の子をぼくが横から喰っちゃうって算段なくらいだったのに。そのつもりがさ、あの学校の王子様とホモってるっていうからどういうワケか、のっちのコト抱いちゃって、男(ケツ)も悪くないのな…みたいな。いやいやいやいや、のっち以外の(ケツ)は今でもムリ。絶世の美少年とか言われてる温室でピアノ弾いてそうな武中(たけなか)のケツでもムリだもん。王子様も。いくら綺麗でもあの無愛想な顔でのっちみたいにあんあん言われたら萎えるよ。ちょっと想像してちんこ抉れたし。ポジティブ脳筋向こう見ず言われてるケドぼく、考えたら結構奥深くまで考えちゃうタイプよ。のっちのケツにしたみたいに。 「は~」 「辛気スメハラ。やめてよ。ジジイ?」  縁はぼくに優しいね。のっちの傍に合法的に居られるのは、ぼくが誤算する前から縁に言い寄ってたからで、まぁ色々(いろん)なコトが大きく捻じ曲がったり取っ替えられたりして変わったケド、形式上変わらずに居られるのは意外と縁のおかげだったりする。ぼくはもうのっちを膝には乗せられないし、乳首(おっぱい)も弄れない。だってガチガチになる自信あるから。あとなんか、純粋に、そういうのが後ろめたくなってきちゃったというか。 「(たい)ちゃん悩み事?」  曜日によるケド大体2時間目と3時間目の間食(もぐもぐ)タイム、楽しそうだからぼくも参加してる。縁はなんかチョコの実パイとかコアラッコのパレードとかトポッポ。のっちはバ先でもらってくるやつ、大体さくポテとかプチちょこクッキーとか刺激エクストラグミとか。ぼくはバランスみてアーモンドっと小魚とか押忍お酢帝都こんぶとかメン麺チップとか。まぁ定番だわね。 「う~ん、悩みってほどじゃーない」  のっちが今日ぼくの持ってきたいがぐりの村を食べてくれてて嬉しかった。縁は絶対にいちじくの町派だって言って譲らないから。戦争問題に至るらしいから怖いよね。だからぼくものっちが持ってきたジューチィ果汁グミをもらった。縁も張り合ってくるから楽しい。 「泰ちゃんにはこの前泊めてもらったし、うん、なんかあったらさ、相談してよ」  ニヤけそうになる。ぼくの家泊まったってコト、のっちが自分から認めてくれたのが。ぼくの気が狂ってなければ事実なんだケド、のっち、恥ずかしがって認めたくないかなって。後ろめたさとかさ。意外ときっちりしてるから。意外とな。遊んでそうな見た目なのに。 「え、待ってショータ!こんなチン毛野郎の家に泊まったの?」 「うん。いっぱい動物いた。帰るときハムスター、手に乗ってくれて可愛かったよ」  縁がそこにツッコムせいでのっちはちょっと照れはじめた。 「変なコトされなかったよね?ショータ!こいつ、マジでヤバいんだから!」 「ヘンな、コと…シてなイよ。ね?泰ちャン……?」 「うん。アイス食って寝て朝にはそれぞれグッバイ!って感じ」  のっちの焦りまくってる目がぼく見て、そんなんじゃ怪しまれるのに。逆に何もしてなくてもシたことになっちゃうよ。シたけど。かなり情熱的(ヤバめ)なセックスしたけど。もうガチめにぼくが正妻(カレシ)なんじゃね?ってレベルのラブラブセックスしたけど。それは夢ン中でだっけ?まぁいいや。 「ふーん……ショータがそう言うなら信じるケド、さ」 「へへ」  縁はナチュラルにミシなんとか、王子様のほう見てて、あ~失礼なやつ。のっちが気付いたら傷付いちゃうじゃん。ぼくが誑かしたんだケド。だから王子様とか縁が二股野郎だの不倫だの言うなら責められるべきはぼく。寝取り野郎は褒め言葉。寝取られた野郎が正義語っちゃってまぁ、片腹の痛いコト。敗者。オスとして負け。そんなんじゃ、ヒトとしてだってどうだかな。こんなコト言ったら王子様、効いちゃうかな?育ち良さそうだもんな。しっかり恋人(カレシ)のケツは開発してるみたいだけど。それよりも話あるんだよな。話。動画がどうってやつ。なんか勘違いされてる臭くて嫌ァね。でもぼく、王子様と話すの疲れるってゆーか?イケメンとイケメンが喋るのヤバいエネルギーが発生するんだよ。小学生の理科で習うだろ?知らないケド。でも王子様は伝書鳩役のクラスメイトに呼ばれて廊下に出て行った。また呼び出されたんだって。2年の校庭側の駐輪所前の大銀杏前でコクると叶うとかなんとか。あ、このクラスのナントカくんが落っこちた場所の近く。肉片飛んだんじゃね。まだ生きてるんだっけ?脳髄くらい飛ぶんじゃない?学園七不思議が増えるね。ひとつ増えたらひとつ減る。学園八不思議にはならない。七は切腹の意、八は末広がり。八不思議じゃ縁起が良いもんな。なんの話だっけ。なんの話だったか思い出すのに夢中で、のっちの顔見てたら唇に食べかす付いてて、取ってあげるつもりだったんだよ。ンでも気付いたらチュウしちゃってた。だって唇上向いてて美味しそうだった。もうなんか、ホント、ぼくさぁ、のっちのコト好きになっちゃってない?守りたくなるような年下子リス系は勘弁だったのに。 -鵺-  欲望に標準なんてものはなくて、欲望なんて届きそうになれば遠ざかっていくものです。僕にとっての欲望は能登島先輩です。能登島先輩、能登島先輩、能登島先輩、僕は能登島先輩と口にするだけでerectionが治まらなくなって、能登島先輩の声を聞くだけで喘ぎ声だと思ってしまいます。能登島先輩、能登島先輩、能登島先輩、僕は能登島先輩の肌を見るだけでセックスをしているような気分になります。実質セックスです。僕の劣情を含んだ息を吸っているんですから。 「能登島先輩、ちょっとお話が」  僕はもう我慢が出来なくなって能登島先輩を部室裏に呼び出してしまいました。能登島先輩は無邪気に付いてきました。これは合意です。和姦です。互いを愛し貫いたカップルのセックスの意気(それ)です。 「能登島先輩。あのですね、こういう卑猥なビラが送られてきたんですけれども」  僕の家から、僕の下駄箱に。能登島先輩は無邪気に、まるで処女みたいに僕の突き出したビラを覗き込みました。固まった子猫みたいな顔に僕のpenisは金剛石よりも固くなりました。 「ああ……それ。あんまり気にしないでいいよ」  強がって、無関心な振りをしているのでしょうか。本当は心細いのではありませんか。強がっている姿も可愛いです、能登島先輩。可愛いです。可愛いです、能登島先輩。可愛いです。 「能登島先輩本人が知っておいたほうがいいと思って。ですがご存知でしたか」 「うん。ごめんな、変なコトに巻き込んじゃったよな。色々あって、恨み買っちゃってさ。恨み売っちゃったのは多分オレのほうなんだけど」 「どういうことですか?」 「ううん。こっちの話だから。ホント、ごめんな。このコトは忘れて」  結果はつまらないものでした。思った反応と違いました。能登島先輩の中で何かまったく見当違いな考えがあって、それは僕の(あずか)り知らないことのようです。ずっと能登島先輩を見てきた僕が与り知らないことなんてあるわけがありません。 「能登島先輩……あの、その………男同士でいかがわしいことをしているというのは本当ですか?能登島先輩はサッカー部員の便所というのは…僕が知らないだけだったんですか?能登島先輩、恥ずかしながら、僕はこの歳でまだ童貞で…」 「こんなの全部嘘っぱちだから!気にしないで、ホント!こんなのがホントだったら、何でもアリになっちゃうし」  部室に戻ろうとする能登島先輩の行手を阻みました。僕の予定は多少内容を変えても、きちんと遂行されねばなりません。能登島先輩を手に入れます。能登島先輩を強姦もしたければ、能登島先輩と和姦もしたいのです。両方、したいのです。器用な能登島先輩のvaginaならば強姦と和姦で違うはずです。そうでなければおかしいのです。能登島先輩は地球総人口越え何百億人を相手したセックスのプロなのですから。 「えっとさ、えっと……オレも童貞。でも武中カッコいいしカワイイしスタイルいし爽やかだからモテるでしょ。それでもダメなら泰ちゃんに訊いてみなよ。可愛くて優しい女の子紹介してくれるよ、きっと」 「能登島先輩。僕、女の子と付き合う前に練習しておきたいです。能登島先輩は色事に長けていると書かれていましたから。能登島先輩、僕の練習相手になってください。能登島先輩は男を愉しませる天才だと…」 「だから!あの紙に書いてあったことは信じないで!それに女の子相手の練習するなら男相手にしたって…」  ですが能登島先輩は背の高めな女子よりも小柄な印象を受けました。華奢だからだと思います。能登島先輩は女子の華奢とは違うのです。女子の華奢ならばとりあえずの脂肪は付いていますが、能登島先輩の体格は貧相な意味合いで華奢なのです。おそらく能登島先輩のほうが大体の女子よりも背は高いでしょう。ですが印象からいうとまったく違います。どの女子よりも小さく見えるのです。キリンやゾウやダチョウと戯れる子犬です。 「能登島先輩」  僕は能登島先輩を部室裏の壁に押し付けてしまいました。真横に部室の窓があります。第二体育の西口から丸見えで、職員駐車場を囲う木々の陰に隠れています。 「ですがここにこんなキスマーク付けておいて全部嘘ってことはありませんよね?その、手練手管を教えてください。女の子にこんなことはお願いできません。美潮さんとは別れたと言っていましたよね?」  両腕で閉じ込めてしまうと能登島先輩は下を向いてしまいました。能登島先輩のほうが背が低いので外が暗いこともあり、その表情は見えませんでした。能登島先輩がいけない。僕の想像を越えてショックを受けてくれないんですから。ですがこれはこれで、僕にとってはありがたいことでした。 「武中、ちょっと近いし怖い…」 「そうですか?普通の距離だと思います」 「こんな近付くの、特別なカンケーじゃなきゃ無いよ。だって腕広げたら当たっちゃうし…」 「これも能登島先輩にしか言えないような恥ずかしいことなんですけれど……キスもまだなんです。キス、してもいいですか。さっき(うがい)はしました」  これは嘘です。けれど半分は本当です。何人にも不本意にキスをされたことがありますが、本当にしたかったのは能登島先輩だけで、それはこの前眠らせた時に終えました。ここまで来たら、意識に刻み付けたいのです。 「あ、ああああのさ、練習なんて要らないよ、ファーストキスに!とっておきなよ」 「じゃあ頬っぺたに」  僕は能登島先輩の桃のような頬にキスしました。能登島先輩はちょっと顔を背けるだけでした。まだ放せそうにありませんでした。 「武中?話、終わったよな…?話してくれてありがと…その紙、オレが破って捨てておくし……」  能登島先輩の困惑は強く胸が締め付けられます。動悸がしました。グッときてしまいます。僕はまだ壁の中に能登島先輩を閉じ込めていました。 「能登島先輩、本当にサッカー部の便所というものではないんですね?いかがわしいことなんてなかった、本当に?誰にも言いません。何かあるのなら相談してください。僕は何も知りませんから、力になれそうなことなら力になりますし。僕はいつも元気で明るい能登島先輩をこれでも心から尊敬しているんですよ」  サッカー部のvaginaでないことは本当です。誰からも輪姦されてなどいませんでした。伏木部長も霜霧キャプテンも能登島先輩に手扱きの要求すらしない有様ですから。 「武中、なんか今日グイグイくるじゃん。こんなのがきっかけで仲良くなるってのも複雑…」 「美潮さんと別れたと言っていましたから傷心中なのかと思って、そこにこんなビラのことがありましたから。能登島先輩が落ち込んじゃうんじゃないかと思ったんです。でも僕は、傍にいますよ。尊敬する能登島先輩ですからね」 「美潮のコトは全ッ然。クラスメイトって意味。勝手に付き合ってるコトになってただけ。もう仲良くしないって話」  恋人つまり美潮さんが能登島先輩のレイプされている写真や動画を使って毎日毎晩masturbationして発情しているに違いないと書いたビラを送り付けたからですか。読んでくれたのだとしたら嬉しいです。能登島先輩、あなたの心に響くものがあったなら。

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