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第5話 セックス
たったの一回だけだから、どうか見逃して欲しい。
夢だと思って、忘れて欲しい。
触れてしまったけれど、鬼になるのは、あとでナシにしてあげるから、お願い、今だけ――。
「ン、ん、んんんんっ」
「っ」
浅ましいくらいに四つん這いになった俺の腰を鷲掴みにして、カズが入ってくる。
「ぁ……ぁ……んんんんっ!」
「っ、んだよ、これっ」
奥を優しく貫かれた。
「んんんっ」
バックで本能剥き出しにして抱いてくれるところを何度も想像した。このベッドの上で、一人で指で何度もした。
今、そのベッドで、本当に抱かれてる。だらしのない、はしたない音をさせながら、カズとセックスしてる。
「ンんんっ」
「ヤバ、っ、ナオの中、すげ」
弟に抱かれてる。
「ン、ンンッ、ん」
「ナオは? 気持ちイイ?」
「ン、ん、ん」
コクコク頷きながら、シーツを鷲掴みにして堪えてた。
激しくて、ずちゅぐちゅって中を掻き混ぜられるとたまらない。
「ナオ、どう? 本物のほうが気持ちイイ?」
「あ、っ、イイっ、気持ちイイっ!」
腰が揺れてしまうくらい。
「ホント?」
「あっ、やめっ! あぁぁっ、んんんっ……ン」
「あ、ホントだ。すごい、ナオの」
「あ、んんんっ」
背後から、激しく貫かれながら、前、扱かれたら。
「ナオ、カウパー多いんだ」
「あっ!」
「ナオの濡れてる……エッロ」
「っ!」
低い声で耳元で囁かれたら、イっちゃう。
「あんま締め付けないでよ」
「ンっ」
だって、気持ちイイ。
腰を無慈悲なほど激しく打ち付けられて、指しか知らなかった孔が、欲しくてたまらなかったカズのペニスの形を覚えたいって、しゃぶりついてる。絡み付いて、はしたないくらいにしがみつく。
「……イキそ」
四つん這いでバックから激しくされて、腕で身体を支えられなくなった俺は、くたりとベッドに顔を埋めた。尻だけ高く掲げて、恥ずかしい格好。恥ずかしいのに、気持ち良くて、額をベッドに擦りつけながら唇をきゅっと噛み締めた。
「ナオ……」
「っ!」
しがみついて口を窄めしゃぶりつく孔を、深く、強く、抉じ開けられた。
「っ、ナオ……」
「っ、っ、っ、っ」
イク瞬間、名前を呼んでくれたらもうどうなってもいいって思った。そして、腰のところを指の痕がつきそうなくらいにしっかりと鷲掴みにされて、カズが――。
「ナオっ」
「んんんんんっ」
ゴム越しで、カズがイってる。
イキながら名前を呼んでくれた。
「っ、はぁ、はぁ、はぁっ」
まだ、中で、ビクってしてる。カズの。
「っ、ねぇ、ナオ」
肩を丸めて、背中を丸めて、乱れた呼吸をも噛み殺した。ずっとぎゅっと唇を噛み締めていたせいで、返事をしようとしたら、歯が食い込んでいた唇のところがジンジンと痺れていた。
「ねぇ」
「っ、だから、何っ」
ちらりと振り返ると、その痺れた唇に指が触れた。ただそれだけで、感じてしまう。
「痛かった?」
カズは痛みを堪えるために唇を噛み締めていたのかと思ったのか、心配そうに、俺を覗き込もうとする。見られたくないのに。
「へ、き」
「そ? じゃあ、気持ち良かった?」
「気持ちよかった」
「オナニーよりも?」
見るなよ。きっと、ひどい顔してるから。だから見られないように背中を丸めたままコクンと頷いた。
「よかった。唇、真っ赤にしてるから、痛いのかと思った」
「こ、れは……気持ち悪いだろ?」
「……」
「俺の喘ぎ声なんて」
だから、ずっと噛み殺してた。
「萎える、かもしれないだろ」
お前が抱いてきた女子と同じものなんて何一つだってないんだから。
「やっば……」
「?」
「抜くよ」
「ぁっ」
ズルリと抜ける瞬間だけ、声が零れ落ちてしまった。一度だけって言っただろ。それなのに、身体がカズにしがみつこうとキュンって孔を締め付けて、未練がましい物欲しげな声が、思わず零れた。
「そんでさ、ナオ」
「っ、なっ……っ!」
一回抱いてもらった、それで充分だろ。浅ましくて、はしたなくて。
「今度は顔見ながらしたい」
「!」
「ナオ、シーツ、トロットロ。ちょっと身体ずらして。そんでさ」
「カズっ、な、ぁ……あぁぁぁぁぁっ」
浅ましくて、はしたない身体が歓喜して震えた。
「今度は、声、我慢しないでよ」
「ぁ、待っ……カズっぅ、ン」
「声、聞かせてよ」
「あぁぁっ」
こんなの我慢できない。向かい合わせで、両手をベッドに押さえつけられて、カズのペニスが激しく奥まで何度も突いてくれるなんて。
「ナオのエロい声、聞きたい」
「あ、ぁっ」
激しくしながら、覆い被さったカズが耳朶を甘噛みした。
「く、ぅ……ン」
「もっと」
首にキスをして、鎖骨に触れて。
「んんんっ」
「だめ、もっと」
キスの音をさせながら、乳首を舐めて吸ってくれた。
「あぁぁっンっ」
「それ、その声」
自分の零すあられもない嬌声と。
「興奮する」
「ン、んんんっ」
「声、聞かせて」
「ぁ、あっン、ア、ンっ……あぁっ」
「気持ちイイ?」
「い、いい、気持ち、イイっ」
ずちゅぐちゅ濡れた音。
「俺も、すげぇ気持ちイー……」
「ン、あ、あっあぁぁン」
「ナオの声」
いやらしく卑猥なセックスの音。
「甘くて、食べたくなる」
「あぁ、ン、っ……ン、んっ……んんん」
そして、舌の絡まり合う音。
「たまんない」
「ン、ン、んんっ、ン……く」
「ナオ」
低く掠れた声で、カズが俺を呼んでくれた。
「ぁ、ぁっ……イく、カズ、俺もう、イく、から」
一緒にイって欲しいと、脚をもっと広げて、もっとぐちゅぐちゅに犯されたいと、身体を開いて、恋しい弟の唇に舌で触れた。
「ナオっ」
「ン、んんんんんんっ」
そして、また、俺の中でイク瞬間のカズの声と一緒に、射精した。
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