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第15話 静かに、して
手を繋げるのは電車に乗るまで。
ガタンゴトンと揺れる車内では手は繋げない。明るいし。人いるし。でも、各駅停車の電車にしたからかな、そうたくさんの乗客じゃなかった。
ゆらゆら、電車が揺れて。
ゆらゆらしてたカズの頭がコテンと肩に乗っかった。本当に寝てるかどうかはわからない。向かい合わせになっているガラス窓に反射で映ってるカズは寝てるようにも見えた。
そして、俺も、一緒になって寝てしまいましたってことにして、カズの頭に顔を傾けて目を閉じたんだ。
左半分で感じる、一番身近で、一番遠かったカズの体温に、匂いに、ちっとも眠れないけれど。
目を閉じながら、この電車が一つずつ駅で止まるのを、まだあと六つ、五つ、四つって数えてた。
ナオ、先に帰ってて。
カズが先に帰ってなよ。
電車を降りる直前、そんな押し問答を少しだけした。
お前、高校生じゃん、っていうのは言わなかった。弟だし、高校生だし、早く帰ったほうがいいのはカズのほうだけれど。
コーヒーを飲んでから帰ると言われて、素直に頷いた。きっとカズは引かないだろうし、それに、俺も早く帰りたいって思ったから。早く帰って……。
「っ……ン」
一緒には帰れない。一緒のうちに住んでるから。
「っ」
時間差で帰って、俺は急いでシャワー浴びてた。小学生じゃない息子たちの帰りの時間などはあまり気にすることなく父さんも母さんももうすでに寝ていた。
「っ……」
濡れた音があまり響いてしまわないように気をつけて。
「っ、はぁ」
零れそうになる甘い声を喉奥で推し戻してそっとスマホに手を伸ばした。
「っン、ぁっ」
今日、楽しかった。
ドキドキした。
恋っぽくてさ。
デートできて、蕩けそうになるくらい嬉しかった。
「…………ナオ」
「カズっ……コーヒー、一杯、長いっ」
好きな人とさ、デートできるなんて思ってなかったから。
「ナオ、っ」
さっきスマホに入れたメッセージは一言だけ。カズ、って名前を呼んだだけ。
「声、我慢する、から、カズ」
慌てて走って帰って来た? 息が切れてる。けど、そっと玄関開けて、そっと、階段上ってきたんだろ? 音、足音もしなかった。そっと部屋が開いて、その音に振り返ったんだ。
「ここ……も、柔らかい、から」
四つん這いになって、自分で孔を柔くほぐしながら、カズのことを待ってた。
「…………して、カズ」
「っ」
指でしてたのを抜いて、その濡れた指で、広げて見せた。
見て。背中を反らせて、振り返りながら、自分でそこを広げてみせる。早く欲しいって身体を奥まで熱くさせてるって。目を見開いてこっちを見つめてたカズが、歩きながら黒のニットを脱いで足元に落とした。そんなに広いわけじゃない部屋だから、裸で待ちぼうけしてた俺に覆い被さる時はまだズボンの前をくつろげただけ。
「早くっ……ぁ」
「待ってた?」
「ン」
手をついたカズが額を、まるで甘える猫みたいに俺の首筋に擦り付けてくると、髪の冷たさに、背中がぞわりとした。
「髪、冷えてる」
「冷たかった? 走って来たから」
「ぁ……」
「横っ腹が痛くなったっつうの。マジダッシュ」
俺は、自分の部屋で時間を置いて帰ってくる弟のことを待ってた。どんどん身体は熱くなって、イっちゃいそうなくらい。
「カズっ」
「ナオが俺を呼んだから」
「ぁっ……ン、ぁ」
「まさか、できるなんて、思ってなかった」
だって、したくてたまらなかった。
「挿れるよ。ナオ、声」
我慢するから、早く、挿れて欲しい。
「ぁ、あっ…………っ!」
囁かれ、走ってきた名残がある乱れた呼吸を耳元で聞かされながら、孔が抉じ開けられた瞬間、ぶわりと快感が身体に滲む。絞らなくても滴りそうなくらい身体が快楽に浸って濡れて、潤んでく感じがする。
「あっ……はぁっ、はぁっ」
太くて大きくて硬くて、熱いカズのに後ろから強く鋭く抉じ開けられて。
「ぁ、気持ち、イっ」
小さくそう啼いて、カズのペニスが奥まで来れるように背中を反らせて、腰を振りたくる。服をほとんど着たままのカズに覆い被さられた俺は裸で脚を淫らに広げて、孔を奥まで貫かれてる。
「んんんっ」
後ろから。
「んんっ」
最初から激しくされてる。
「ぁっ」
「ナオ、膝、痛いだろ」
耳元でそう乱れた呼吸混じりで尋ねられて、孔がカズのペニスを切なげに締め付けた。太くて、熱いのが自分の中を貫いてるのがわかって、またそれにも腰を躍らせてしまう。
「ふっ、んんんっ」
「苦しい?」
後ろから抱きかかえられて、膝の上に乗せられた。ずくりと突き刺さるペニスの質量に目の奥で星が瞬くくらい。
「ぁ、気持ち、イ……よ」
そう、背中から全部カズに預けて、今度は俺が甘える猫みたいに頭を擦りつけながら伝えた。
カズのペニスが奥深くまで来る。前の気持ちイイとこを押し潰すように、中を擦って、はしたない格好が真正面からじゃきっと丸見えだって思うと、たまらない快感に震える。
「ナオ……」
やらしい? カズには見えない?
「ン、カズ……」
俺の、カウパー零してる。さっき自分の指で広げて柔らかくした孔で、セックスしてる。
「あぁ……」
「ナオ」
「っ、っ」
お互いに声が零れそうで必死になってキスをした。舌を伸ばして、絡ませながら、お互いの身体に自分を押し込んで、掻き混ぜてる。奥まで全部、カズの。
「やばい、ナオ」
「っ、っ……っい、よ、カズ」
ベッドじゃないだろ?
「ここ、なら、音、しないから」
ギシギシ軋んだ音しないから。
「だから、床……で、待ってた」
ずちゅぐちゅって、カズのペニスを自分から腰をくねらせて、扱きながら、後ろから抱きかかえてくれるカズに身体を捩ってキスをした。
「もっと、して、カズ」
「っ」
目が合った瞬間、そうねだると、息を噛み殺したカズが俺を抱きかかえたまま、体勢を入れ替える。ベッドの上に置いておいたカズの、デートの時に貸してくれた柔らかいグレーのストールを下に敷いて、そして、本能任せの腰付きで、四つん這いになった俺を後ろから激しく突いてくれる。
「ン、ンンんっ、ン」
強い一突きに、耐えられなくて、ストールに顔を埋めるようにうつ伏せになった。繋がった孔を犯して欲しそうに高く掲げるように差し出して。
「んんっ」
どうしよう。これ、ダメだ。
「っ、ナオ?」
「っ」
ほら、知られてしまった。今、とても興奮してることを。カズのペニスをきゅぅぅんって孔がやらしく締め付けて。
「カズの匂い好き、なんだ。だから」
「……」
「これ、貸してくれた時からずっと」
嬉しそうに身体がカズにしゃぶりついたから。
「こうされたかったから、ぁっ、んんんっ」
「今のはナオが悪いよ」
「ン、ン、んん」
「俺もずっとナオとこうしたかったんだから。責任取って」
「っ」
激しいセックスにずり上がりそうになるのを、俺はストールをぎゅっと握って堪えて。後ろから犯してくれるカズをちらりと見た。
「ナオっ」
苦しそうに顔をしかめるカズを見ながら、声を零さないように柔らかいストールに顔を埋めながら、腰を鷲掴みにされてる。
「っっっっっ」
ナオがゴム越しにイクのを感じたら、蕩けるほど気持ち良かった。
「ぁっ……はぁ、はぁ、はぁ」
「っ、っ、ね……ナオ」
「っ?」
「俺も記念みたいなの、もう一個欲しい」
「ンふっ……はぁっ……っ」
蕩ける以上、だ。溶ける。
「ね、ナオ、ちょうだい」
熱い舌に溶かされそうなくらい深いキスをされながら、まだ硬いままのカズのペニスがイったばかりの俺の中を擦って、くちゅりと甘い蜂蜜みたいな音が聞こえた。
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