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第28話 男
「あ、あぁぁあっ……」
俺の中に挿ってくる時、カズは怖い顔をする。雄っぽくて、乱れたリズムの荒れた呼吸も、険しくなる眉間の皺も、鋭く射抜くような視線も、ゾクゾクするほど男っぽくて、たまらなくなる。
「あっ…………っ」
「っ、ナオ」
男、みたい。
「はぁっ……ンっ」
腰を深く突き入れられて、奥が抉じ開けられた瞬間、身体が弓なりに仰け反った。深くて、強い一突きに身体が悦んで。
「ナオ、挿れただけでイったの?」
「ン、ぁっ……だって」
言いながら身体を少し揺らされるだけで気持ち良くて、ゆっくり中をペニスで擦られてながら、肌にキスを落とされて甘く啼いてしまう。
感じてしまう。
「っ、すごいんだけど中が、やばい」
「んんっ、ぁっ、はぁっ」
きゅぅん、って切なげに中がカズに吸い付いて、その度に、覆い被さるカズが息を詰めた。
「ンっ」
おかしくなりそう。絡み付いて、挿れられただけでイった。
「待ってて、今、一回抜、」
「へ……き」
待って、抜かないで。
「ナオ、ゴムつけるから」
「や、だ」
このまましたかった。だから慌ててしがみ付いて、脚をはしたなくカズの腰に巻きつけた。
「ナオ、たぶん、俺、止めらんないから。ギリギリで抜くとかきっとできそうにない。たぶん、ナオの中でイきたくなる」
目を細め、何かを堪えるように表情を険しくさせたカズが、イったばかりで息が乱れた俺の唇を親指で拭うようになぞって頬を撫でてくれた。
「な……いよ」
「ナオ?」
その掌に、まるで猫のように頭を傾けて、打ち明けた。
「ゴム、持ってきてないよ」
「……」
「言ったじゃん」
そっと、まだ中にいて張り詰めた熱の塊みたいなカズのペニスを腹の上から撫でるように掌を置いた。
「今日は、このままがいいって」
「……」
「中に、出してよ。和紀」
とても珍しく名前で呼んだ。
「あ、あぁぁぁぁっ! ン、ぁっぁ、おっきく、っン」
「あんま、俺のこと興奮させないでよ」
「あぁぁぁっ、あっ」
いつもは、子どもの頃から変わらず、カズって呼んでるのに、今は、和紀って呼んだんだ。
「あ、ンっ……ぁ、そこ、だめっ、ぁ、やぁぁっ……ン、ぁっン」
まるで男みたいに名前で呼んだ。
「もっと呼んで、俺のこと」
「ぁ、あっ、ン、和紀っ」
でも、今日は中でそのままイって欲しい。俺の中で、イってよ。
「ぁ、はぁっ……ン、そこ、気持ち、イ、っよ」
だって、今日は声を我慢しなくていい。
「ぁ、あっイくっ……和紀っ、俺、イくっ」
「っ」
「和紀、も、イって、俺の中、に、して」
ねだる声がたまらなく甘ったるかった。
「ぁっ、あぁぁっ」
激しく突き上げられる度にシーツをぎゅっと握って、はしたなく啼いた。
「ぁ、あっ」
ゆっくり突き上げられて、強く激しく一突きで奥まで抉じ開けられて。
「やぁっ……ン、それ、たまらないってば」
孔で蕩けるほどの快楽を与えられて。
「ナオっ、ホント、ずるい」
「ぁ、ン、あン、ぁっ……ン」
おかしくなる。こんなに激しく奥まで抉じ開けられて、トロトロになった身体を折れそうなくらいに抱き締められて、壊れそうなほど揺さぶられてる。
キスマークをたくさん付けて、びしょ濡れになるほど甘くて卑猥で淫らにセックスしていい。だって――。
「もっと、呼んでよ。ナオ」
だって、今日は弟のカズじゃない。
「直紀」
「っ、ン……ぁ、や、あっ」
和紀に抱かれてる。
「ぁ、中に、欲しいよ」
「っ」
「和紀の、中に、欲し、い」
俺の……だ。
「あ、あ、あぁっ」
「っ」
和紀になら、何されたっていい。
なんでもしていいよ。なんだって欲しいんだ。
「あ、あ、あ、あ、っ」
壊れるくらい奥を抉じ開けられるのも、おかしくなりそうなほど愛撫をほどこされるのも、壊れるくらいに抱かれるのも。
「っ、直紀っ」
「あ、ぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
腹の上に俺の精液だけが飛び散った。
「あっ、熱……い、んく、ぅ……ン」
カズのは俺の中。そして、腹の上に飛んだ白をカズの指が掬い取って、それを勃ってコリコリになった乳首に塗りつける。親指で押し潰すようにされて、摘まれて、気持ち良さそうにツンと尖ったまま。
「ぁ、あっはぁっ…………っ」
和紀がくれるものなら、なんだって。
「っ、直……紀っ」
「ん、く、はぁっ……ン」
欲しいよ。
「ン、ふぁっ……」
「……ナオ」
「ン、もっと……欲しい」
言いながら、カズの指にキスをしてしゃぶりついた。指を懸命にしゃぶってたら、代わりに舌を差し込まれ、噛み付れる。甘い激しいキスをしながら、濡れてトロトロになった奥深くまで貫かれた。
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