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第29話 甘イキ

 胸板が分厚いわけじゃないのに、剣道の道着姿がすごく似合ってたんだ。あれは俺が剣道の大きな大会を控えていた時だった。俺が高校一年、カズが中学三年。稽古をしているカズの姿に見惚れたことは何度も合ったけど、その日はなんか、いつも以上に目が離せなくて。  理由は単純なもの。  その数日前に、カズが彼女、じゃないのかもしれない。今となっては遊び相手の女子の一人だったのかもしれないけれど、とにかく女の子と一緒に歩いているのを見つけてしまったんだ。  モテるのは知ってた。女子に人気だっていうのもわかってた。  けれど、特定な誰かと並んでいるところを見たのはそれが初めてだった。  俺は、兄なのにうらやましいと思ったんだ。  カズにじゃなく、その女子に。  兄なのに、自分の気持ちを自分自身で咎めることもせず、ただ、カズを独り占めできる誰かのことをものすごく妬ましく思った。  腹の底が焼け焦げそうなくらい、妬んでいた。 「…………ン」  お腹のとこ、まだ熱を引きずってる。 「……起きた?」 「……カズ」  浴衣、来てる。 「今、何時?」 「んー、夜中の三時」  俺は裸のまま、腰の辺りに毛布をかけていただけ。起き上がると、その毛布が捲れて、太腿まで点々とキスマークを残す太腿が露になっていた。それを慌てて毛布で覆い隠した。もちろん、キスマークがついているのは太腿だけじゃなくて、肌に点々と刻まれてる。気持ちイイと喘いだ場所全部に。  カズがベッドではなく、窓の縁に腰を下ろして、海を眺めてた。ベッドサイドにあるランプでほんのり明かりが滲む部屋の中、静かに海を眺めてる。 「ナオ、平気? 意識飛んでたっぽい」 「あっ」 「中に出したの掻き出したけど、どっか痛かったら言って」 「あ、うん。大丈夫」 「そう?」  俺が頷いたのを確認して、また窓外へと視線を移した。  やっぱり、道着で慣れてるのかな。横顔が外の月明かりに照らされてる。浴衣が似合ってた。  少し肌が覗く胸元も、しっかりと筋肉のついた肩も、すごくゾクゾクしてしまうほど色っぽくて。じっくり眺めてしまう。  そしてこの薄明るい部屋の中で、その首筋に引っ掻き傷を見つけた。 「カズ」 「?」  名前を呼ぶとこっちに振り返る。何もセットしないラフなままの髪にどきりとしてしまう。 「あ、あの、首んとこ、痛くないか? その、爪が」  ちゃんといつも切ってるんだけど、それでも引っ掻いちゃったんだ。たぶん、無意識だったんだと思う。つけた本人がそれを覚えてない。 「平気だよ。ナオ、すっげぇ力でしがみついてたもんね」 「っ! そ、そんなに?」 「さすが剣道地区大会優勝常連」  ふわりと微笑み、窓際からこっちへと歩いてくる。 「覚えてないの? 中出ししてってねだってくれたの」 「そ、それは、覚えてるけど」 「けど? じゃあ、四回目にイった時のは?」  挿れられた時に達したのは覚えてる。その後、ねだってゴムをつけずにしたのも覚えてる。もっとって甘えて、抜かずにそのまましたのも。 「ここ、射精せずに、イったんだ」 「っ」 「ナオ、中でイってたよ?」  ベッドがカズの分の重さも受け止めて、波立つように揺れた。 「ここだけで、イってた」 「あっ……ン」 「その時に、ここ引っ掻いたんだよ」 「あ、あぁっ……ン、カズっ」  柔らかく、まだ熱が残る孔にカズの指が入ってくる。 「ンっ……はぁっン」  震えるほど気持ちイイ。嘘みたいに。 「あっ、ぁっ」 「ナオ……」 「はぁっ、ぁ、あっ……ン、カズ」 「ね、ナオ」  肌に歯を立てられただけで、中が疼いてしまう。掻き出されてしまったって、愛しい熱がまた、もっと、たくさん欲しいって、じんわり火照ってく。 「露天、入ろうよ」 「あぁぁっ……はぁっ、ぁっ」  露天風呂の縁に腰を下ろしたカズの上に背中を預けるように跨って、自分から腰を振ってる。 「あぁぁっ、ン、ぁ、んっ」 「ナオの背中って、綺麗だよね」 「ぁ……ン」 「その綺麗な背中を反らせて、ここにずっぷり俺の嵌めてんの、すげぇ興奮する」 「ン、バカ、綺麗、なんかじゃな、ぁあっ!」  背中のラインを指でツーッとなぞられ、何度もしたセックスに蕩けた身体はビリビリとひりつくような刺激に仰け反った。 「ぁっ……カズ」  太くて、硬くて、熱くて、すごく気持ちイイ。 「ね、ナオ、そのまま振り返ったまま腰振って」 「ぁ、あっン、あンっ」 「そ、すげ、気持ちイー……」  俺の後ろで、カズが表情を歪ませてるのが視界の端に映る。  それが嬉しくて、はしたないくらいに腰を振りたくった。カズの硬いを孔で扱いてく。  腰を上げるとカズのがずるりと中を擦って、太いのが孔の浅いところに引っ掛かるのが好き。そしてそこからズブズブと自分で飲み込んでいく。カズが中に来る感じに前をトロトロに先走りで濡らしながら、何度も何度も夢中になってそれを繰り返した。 「あっ、ぁ、ン、気持ちイ、っ」 「ナオ、これ好きなの?」 「ン」  好き。 「あぁぁぁっ」 「中がきゅぅ、きゅぅ、エッロいんだけど」  腰を両手でぐっと鷲掴みにされ、根元まで一気に突き入れられて中が本当にしゃぶりついてる気がした。狭くきつく孔を窄めて、カズのこと欲しいって、しゃぶってるみたい。 「甘イキ、してる時の、ナオの中、やばい」 「ぁ、あっ」 「たまんない」  たまらないよ。 「ナオ」 「あっ、っ」 「激しくするから、寄りかかってて」 「ぁっ、ン、やぁぁぁっ、乳首、や、ぁ」  腕を引かれて、カズの懐に倒れ込むとそのまま乳首を背後から抱き締める手に摘まれた。 「やあ、ぁっ」  触られたくて切なくなる。 「ぁ、ン……カズ」  触って欲しい。乳首も、それに。 「ナオ」 「あっ……ン」  コリコリになってる。乳首が興奮で硬く勃ってる。それを長い指が摘んで、カリカリって引っ掻いてくれる。 「ナオ、言ってよ」 「ぁ、あぁ……」  耳を甘噛みされたら、ダメになる。 「ここも、こっちもトロトロ」 「やぁっ」  乳首、気持ちイイ。 「ぁっ……」 「……ナオ」  たまらない。 「お願い、イかせて」 「……」 「和紀」  俺のもの。 「和紀」  あの日、嫉妬で、羨ましさで焼け焦げそうだったここに。 「和紀の、中にまた、して」 「……」 「イかせて」  全部注いで。腹の中全部を和紀でいっぱいに、させて。

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