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第52話 願っていた

 小学一年生からずっと通ってた。二年に上がると同時に後を追いかけるようにカズが入ってきて、それからは週二回通っていた。 「ん……ンン、ん……んふっ……ぁ」  今、その道場の更衣室に二人っきり。 「ん、ンっ」  いつも俺のほうが着替えが終わるの早くて、この長椅子に座って待ちぼうけしてた。チラチラと伺うように、弟の着替えを盗み見ながら座ってた。  皆を帰して、鍵をかけて、その更衣室に二人っきりで。 「んんんんっ、ンく」  いかがわしいことをしている。  長椅子に弟のカズが座って、腰紐を解いて前を寛げたそこに、俺がしゃぶりついてる。  舌を這わせて、手を添えて、竿にも先端にも、根本にもキスをしてから、また舌を絡みつかせるようにして唇で咥え込んでいく。 「ンン」 「っ、ヤバイ、ナオ」 「ん……?」 「ナオっ」 「あっ、まだっ」  また口でしたいのに、押し倒されて床に転がった。カズの手が頭を支えてくれて痛くなかったけれど、その分、顔が、何もかもが近くて、重なり合った場所から触れる熱に身体の奥が濡れた気がした。 「俺が着替えてる間さ、よくここの長椅子にナオが座って待ってた」 「……あ」 「俺が何を考えてるかも知らないで」 「あ、カズ」  カズは何を考えてた? どんなことを思ってた? 俺は、ね。俺は――。 「カズ、触って、ここから」  袴の隙間から手を入れて? 濡れてるから。 「あっ……ンっ」 「エロすぎ、道着着たまんまそんなエロい声出すとかさ」 「あっあぁ、だって、口、でしながら、ずっと」  硬い布がガサゴソと音を立てる。そしてその内側から聞こえる音は濡れている。 「俺の口でするの、好きだよね、ナオはさ。フェラしただけで……こんなになっちゃうんだ」  頭の下敷きになっている手がきゅっと指で髪を掴んで、覆い被さられた俺は耳を甘噛みされながら、袴の下で不埒に勃起したペニスを握られると、たまらなくて溜め息混じりの甘い声が溢れた。 「ああああっ! あ……ン」 「カウパーすごいよ?」 「だって……」  扱いて。ずっと触られたかった。カズの手で可愛がられたかった。 「カズ、だって、知らなかった、だろ」  身体を重ねて、ただその重さを感じるだけでもクラクラするほど興奮してる。 「この、長椅子に座りながら、俺が」  興奮しすぎておかしくなりそうなんだ。だから、早く。 「何考えてたか、なんて、あ、ぁ」  早く、この身体をめちゃくちゃにして。さっき口で味わったあの硬いのが欲しくて、お腹の底が熱に蕩けそう。 「何、考えてたの? ナオ……」  カズのこれしか届かないお腹の奥のとこが、熱で。 「ねぇ、教えてよ。俺も、教えてあげるから」  頭を支えていてくれていた手が背中をなぞって、そのまま、袴の腰紐に手をかける。ただそれだけで興奮した。今から道場の更衣室で本当に、願望どおりにひん剥いてもらえるんだと思うと、震えてしまう。震える唇をカズの指をなぞって。 「舐めて、ナオ」  開いて、寂しがりな舌を可愛がる。 「ンっ」  ただの指しゃぶり。でもとても卑猥で。 「あっ……ン」 「ずっと、こうしたかった」 「あっ、あぁっ……ン」  自分の舌で濡らしたカズの指が、孔をほぐしてくれる。 「あぁっ」  狭い孔を柔く準備されて、おねだり用の甘い媚びた声が上がってしまう。 「あ……ン」  くちゅくちゅと濡れた音。カズの指が孔を広げるいやらしい音。 「あ、はぁっ……」  着崩れた道着と乱れた呼吸。 「ずっと」 「ン、あ、カズ……ぁ」 「こうしたくてたまらなかった」  はしたない。 「俺も、だよ……カズ」  でもはしたなくていい。  ゾッとするだろ? しゃぶりついて、咥え込んで、俺の身体の中に全部欲しいなんて、そういう類の感情をずっと抱いてたなんて、ゾッとする。でも、もうそういう咎める理性は置いてきた。 「俺も、こうされたくて……たまらなかった」  もう、ここにそんな理性はどこにもない。 「カズ、に、なんでもいいから、どんなでもいいから」  ここにあるのは理性なんて焼け焦げそうな熱だけ。 「抱かれたいって」 「……」 「思って、た……あっ、あああああああああ!」 「っ」  ずぶりと挿し貫かれて達した。 「あっ……ンっ、あ、あっぁ」 「ナオ、の中、ヤバ、い」 「あ、奥、ぅ……ん、気持ち、ぃ」 「そ? 俺も、すげぇ、気持ちイイ」  なんでもいいから、抱かれたかったんだ。カズに。 「ああ、あっン、や、ダメっ」 「痛かったら、言って」 「あ、やぁあっン」  ずちゅりと甘い音を立ててカズのペニスが引き抜かれる。 「やぁっ」  それをイヤがる孔がきゅうぅんって切なげにしゃぶりついて引き留める。 「はぁっん」  戻ってきてくれた太くて硬いカズのにまた貫かれて、甘い声を上げてまた小さく達した。 「あ、あ、あ、あ、小刻み、なの、や、ぁっ、また、イくっ」  ぬちゅくちゅやらしい音。 「あ、あああああっ! ン、ぁ、深いの、き、たぁ……あ」  ずちゅって押し込まれて、快感が溢れて零れる。 「カ……ズ、っ、あっ」 「ナオ、中、蕩けそう」 「ン、らって……あ、ン、そんな激しくしちゃ、や、ぁ、らめっ」  快感に熱で蕩けた舌でまた指しゃぶりをした。しゃぶって濡れた指に乱れ切った道着の合わせ目から覗く勃ってコリコリになった乳首を摘まれて。 「はぁっ……ン」  仰け反って喘いだ喉元に歯を立てられて、また赤い印を刻まれる。 「くぅ……ン」  ほら、もうトロトロ。 「ナオ……甘イキ止まんないくらい、いい?」 「い……よ、だって、あっ! はぁっ……ん、そこ好き、イくっ」  激しくなる音、激しく動き。でもその度にずり上がりそうになるのは許されず、鷲掴みにされて赤く指の跡がつく身体。  肌同士のぶつかる音に混じる、本能剥き出しの呼吸。  足をはしたなく開いて、身体の奥に突き立てられたペニスに悦がって、乳首を甘噛みされては甘イキして。 「ナオ」 「もっと、して、カズ」  ずっとずっと夢見てた。  ずっとずっと、この背中に爪を立ててみたいって思ってた。激しくされて、翻弄されながら背中に痕を刻んでしまうようなセックスをしたいって。いつもは凛々しい道着をくちゃくちゃに乱しながら、猥褻な行為に耽りたい。卑猥な快感に震えてみたいって。 「ナオっ」 「あ、あ、あ、あっ、あ」 「っ」 「あ、ああああああああ! っ!」  この更衣室でずっとそんなことばかり考えてたんだ。 「あっ……」 「ナオ」  この更衣室で――。

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