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第71話 知らない指

 静かに、静かに。 「ン、はっ……ぁっ、はぁっ」  内緒にしないと。 「ン、あっ、あっ」 「……ナオ」 「ン、カズっ……も、イきたいっ」  床に広げられたバスタオルをぎゅっと握って、たまらない快感に零れ落ちる声を堪えてた。 「ん、んっ……ぁン」  ゆっくり、じっくり中を熱で擦られるの気持ちイイ。 「あぁっカズっ」  奥に欲しい。奥まで来て。そこが好き。小刻みに中擦ってよ。カズの太いの気持ちイイよ。一番太いとこで前立腺可愛がって。カリが孔の口に引っ掛かるくらいのところまで引いて、そこから全部、ペニスの付け根まで、俺の中に入れて。抉じ開けて。奥を。 「ぁ、奥、お願い、突いて」 「……」 「いっぱい、中に」  中にいっぱい注いで? 「カズの、精液、欲し……ぁっ」  腰を鷲掴みにされ、背後から激しく奥まで犯される。バスタオルで口を押さえてないと声が零れてしまうくらい、おかしくなりそうなくらい、カズに。 「ぁ、イくっ、イくっ、イっ、ぁっ」  イかされたくて、 「ナオ、中でイかせて?」 「ン、ぁ、ン早く、ちょ、だい」  ずちゅぐちゅ甘い音が零れてしまわないように、お互いをぎゅっと抱き締め合いながらイった。 「あっ……ン」  中出しされるのがあまりに気持ち良くて抱いてくれるカズの肩に思わず噛み付いていた。  額に触れる優しい指。 「ン……」  カズの指だ。 「ごめん、起こした?」 「……ぁ、カズ?」 「まだ寝てていいよ。明日、一限から講義あるっつってたでしょ? バイトもあるのに」 「……」 「無理させてごめんね」  無理なんてしていない。欲しがったのはお互いにだろ? そう首を横に振った。  時計を見ると夜中の二時過ぎだった。この時間なら両親共にぐっすり眠っている時間だから、部屋から部屋へ移動をしても気が付かない。 「起こしたかったわけじゃないんだ。熱、ないか確かめてから、部屋に戻ろうと思っただけだから」  熱? なんで? 「前にさ、その、ゴムなしで初めてした時、ナオ、翌日から熱出したでしょ?」 「……え?」  熱なら、出した。あれは夏の終わり、旅行中にたがが外れたように求め合った後のこと。ただの夏風邪だったけれど、身体の中に熱がじんわりと沁み込んでしまったかのように、その熱風邪はしばらく治らなかったんだ。カズはすごく心配してくれて、しばらくセックスの時、すごく気をつけて俺を抱いてくれた。 「だから、いつもこうしてさ、できるだけナオの熱がないか確認してる。寝てて触っても気がつかない時とかに」 「……」 「熱、なさそう」  起き上がった俺の頭はきっとボサボサなんだろう。頭上のほうを見て小さく笑ってから、カズが首筋を大きな掌で撫でて、引き寄せて、キスをした。 「まだ寝てなよ」 「カズ」 「なぁに? また、したくなった?」 「ちがっ」 「いいよ。俺は」 「ぁっ……ン」  カズの長い指が顎をくすぐる。ただそれだけで抱かれた後の身体は気持ち良さそうに火照り始めてしまう。  離れがたくなるのはお互いに同じだ。触れたらすぐにもっと触れたくなってしまう。 「朝を一緒にっていうの、またしたい」 「……」 「ナオのそのすごい寝癖を笑って、朝にさ、おはようってキスすんの」 「あ、じゃあ、また旅行で」  また笑って、引き寄せて、またキスをした。柔らかい唇が触れるだけの甘い優しいキス。 「毎日、それができたら最高なのに」 「……」 「それを毎日、ここで……」 「……」 「おやすみ」  カズは何かを言いかけて、けれどその何かを飲み込んで、また笑う。首筋を撫でてくれた、引き寄せてくれた大きな手がゆっくりと離れて、カズが部屋を出ると、胸が切なくなった。  カズが座っていた部分がベッドの端に残ってる。掌に、唇に、カズの体温が残ってる。 「……カズ」  中に注がれた熱も、まだ――。  今日は朝から講義がしっかり入ってた、課題はもう提出済みだからまだちょっとマシかな。司は朝から頭抱えてたっけ。俺のレポートを参考にするって言ってたけど、学科が違うからあんまり参考にはならないと思うんだよね。  夜はバイトだ。  そうだ。明弘さんに頼んで少し仕事量を増やしてもらおうかな。そしたら冬に旅行とか。  ――朝を一緒にっていうの、またしたい。  カズと、また。  ――毎日、それができたら最高なのに。 「……」  ――ごめん、起こした? 「……な、お」  ――起こしたかったわけじゃないんだ。 「……ン」 「……なお」 「ン」  ――無理させてごめんね。 「ン、ぁ、カズ」  ――また、したくなった?  気配を感じて手を伸ばすとちょうどそこに手があった。 「カズ? ……ぁ、ン」  長い指に自分の指を絡ませて、引き寄せて、自分の額に触れてもらおうとすり寄せ――。 「!」  違う。 「あっ」  違った。 「…………っ」  指が違ったんだ。知らない指だったんだ。いつも触ってくれる、あの熱くて、たまらなく恋しい指じゃなかったんだ。  兄弟だから気が付いたのかもしれない。違うって。 「っ」 「…………え? 何、今の」 「っ、っ」 「直、紀?」  この指は違う。  弟で、家族で、そして、愛しい男のカズの指じゃないって。 「…………司」  司だったって。

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