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二、明晰夢(めいせきむ)③

 着替えるのかと白狼は背を向けたが、一向に着替える様子はなくそのまま枕の位置を整えている気配に後ろを向く。一瞬だけ見てしまった蘇芳は真っ赤な下着ひとつだけで布団の上に座っている。 「誘惑したいんだけど、本当に今日は眠いみたい。おやすみなさい」 「あ、ああ。あとで着替えを用意する」 「やった。でも僕、赤紅色しか身に着けないので、それ以外の色は着ません」 (だからその下着なのか……あんな面積の少ない布だけでお腹を冷やさないだろうか)  心配になった白狼は、布団を肩までかけ直すが、その時にはすでに蘇芳は寝息を立てて眠っていた。  長いまつげがしっかり閉じた目を隠す。金色の耳にも、屈託なく笑うその健気さにも胸が締め付けられた。白く磁気のようになめらかで染みもないまっさらの身体は、折れそうなほどに細かった。 (うっ)  無防備に眠る蘇芳の頭を撫でたいと、つい触れてしまったのだ。  疲れて眠っている客人に対し、不埒な行動をとったことに恥ずかしくなり珊瑚を抱きかかえたまま立ち上がる。  触れてはいけない。  本能が叫んでいる。愛らしい唇。柔らかく笑う、自分とはかけ離れた美しい種族。そして自分の種を残すことに貪欲で、死をも厭わない。  そんな相手に触れてはいけない。止まらなくなる。次はどこに触れたくなるのか。布団をめくり、直接だろうか。  自分の欲望が騒ぎ経つ。血が沸騰するようだ。白狼は何度も頭を振り、邪念を打ち消しながら珊瑚を布団に戻すと、自分もその横に寝転んだのだった。

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