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二、明晰夢(めいせきむ)⑥

両手を顔に引き寄せられると、頬に摺り寄せた。  その頬の、凍えるような冷たさに驚いて手を離してしまった。 「あ、意地悪っ」 「いや、意地悪とかじゃなくて、その下着だけで眠ったら風邪をひく。頬が……」  両手を伸ばし、白狼の手を取ろうとする健気な姿にほだされ、自分から手を伸ばしてしまう。冷たい頬を大きな手で包み込むと蘇芳はうっとりと目を閉じる。 「頬がこんなに冷えて、寒くないか?」 「白狼が居れば、寒くないですよ」  即答した蘇芳は、頬すりしながら小さく赤い舌を出し、白狼の指を舐めた。 「……この温かさ、欲しい」  指を咥えようと小さく口を開いたので慌てて手を放そうとしたが離れず、胸に引き寄せる形になってしまった。 「胸の中も温かい」 「だから、下着姿だからだ」 「ううん。きっと白狼が心もあったかいからだよ。兄さんも、温かい人だった」  胸に顔を摺り寄せると、金色の尻尾が揺れる。何度も頬擦りされた胸の部分が火傷したように熱く感じる。 「だったらきっと、君も温かい人だ。俺も胸が熱いよ」  髪を撫で、それ以上はダメだと思いつつも耳の形もなぞってしまった。うっとりと瞳を閉じる蘇芳だが、顔色はまだ良くない。 寝顔を見に来ただけのはずだった。マリが台所で珊瑚にミルクを上げている。早く戻らないといけない。  けれど、手は蘇芳に吸い寄せられ離れない。 「僕も温かいかな?」 「ああ。だが身体は冷え切っている。ちゃんと布団を――」 布団を引き寄せようと触れていないほうの手で布団を手繰り寄せ肩にかけた。 すると、蘇芳が嬉しそうに顔を綻ばせる。 「ありがとう。白狼」 顔をぐっと上げ、白狼の頬にお礼だと言わんばかりに唇を押し付けた。 「蘇芳さん!」 「あはは。すごーい。本当に、体が熱くなったよ。白狼の熱が移ったかな?」  唇を、舌がなぞる。 「白狼が唇にキスしてくれたら、僕の身体も一瞬で暖まっちゃうんじゃないかな」 「しない。寝なさい」  からかわれたと気づき、強引に布団に寝かせる。

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