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八章 二
「白狼じゃなきゃ、……いやだ」
弱い姿は見せたくないが、暁の身体を乗っ取っている得体の知れない相手に、身体を許すつもりはない。醜く暴れても、それだけは阻止したかった。
すると口に咥えていたあるものを蘇芳の目の前に差し出してきた。
「これは避妊道具だよ。これを装着して君の中を貫いても、精は注がれないよ」
使い方は分からなかったが奪おうと手を差し出すと、上に掲げて逃げられた。
口に咥えなおすと、挑発するように着物の首元を左右に開く。
力では敵わない。鍵がかかった個室で、誰か来る気配もない。
着物がはだけ、胸があらわになると覆いかぶさってきた暁の指先が胸を撫で上げた。
暴れて敵わない相手ならば、あの避妊具を奪えばいい。今はそれしか精を注がれるのを防ぐ方法が蘇芳には分からなかった。
暁の顔が近づいてくる瞬間に避妊具のパッケージを口で噛む。引っ張って奪おうとすると、胸の尖りを両方摘ままれ痛みで体が大きくしなった。
乱暴に服を剥ぎ取られても、噛んだ避妊具を離さなかったら、暁は口を離した。
そして舌で胸をいじり、ゆっくり下へ舌を這わせていく。
「んんっ」
薄い金色の毛を舌で濡らし、縮こまった性器を舌で刺激し出した。
運命の相手と結ばれるのを躊躇した罰なのかもしれない。罰を下そうとしている、暁の体を乗っ取った人物が誰なのか薄々感じていた。
蘇芳の体を弄び、快楽は与えず恐怖だけを植え付けようとしているこの人物。
「蘇芳。その避妊具を私のここに装着させなさい」
足と足の間に押し付けられた肉茎に蘇芳の手を導いた。
口に咥えていたパッケージを破ると、ゴムが出てくる。上半身を起き上がらせた暁が蘇芳の顔に押し付けてくる。雄の匂いをまき散らし、先端から透明な先走りが滲んできる。
不快だったが、躊躇していた蘇芳の足と足の間へ、指が割ってはいってくると逃げられなかった。中を擦られ痛かったが、中を守るかのように濡れていく。
誰にも触らせていない場所だったが、痛くて不快だった行為で濡れていくのに戸惑った。
「へえ。男なのに中が濡れちゃうんだ。仮腹が出来る部分はここなのかな」
中で指が動く度にくちゅりと水音が響く。気持ちの悪い感覚に、翻弄されないよう必死で暁の雄へゴムを付けた。
付けながら、匂いも形も熱も不快なこれが自分を貫くと思うと、心が震えた。
白狼ならばこんな下卑た行為はしないだろう。不器用ながら、蘇芳が怖がらないよう、労わる。大きな手で、優しく抱いてくれただろうな。
精は注がれないだろうが、この男が自分の中に入ってくる。心底に気持ちが悪かった。
「下手糞だなあ。まあ、紅妖狐は精がほしい種族だから、避妊なんて必要ないもんね。愛しい男の精で腹を満たしたいんだろうねえ」
ぎこちなくゴムをつけていた蘇芳の手を払うと、片手で根元まで装着した暁が、太腿を掴んで大きく開いてくる。
「蘇芳。いいかい。運命に逆らうなよ。今度は避妊してあげないからね」
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