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八章 六

「蘇芳さんたちと合流する前に白山の書物を確認した。『人間と共存すると選んだ大和家の祖である狼は、白い亀に薫陶を受け人間と共存の道を選んだ』と示していた」 「じゃあ、蘇芳さんを育てた白翁さんは、大和家と深い縁がある人物かもしれないのね」  白狼が頷くと、撫でていた手を止め母親は立ち上がる。 「満月になったら身動きできないから今から、ダーリンのもとへ行ってくるわ」  そして眠っている珊瑚をもう一度撫でる。 「この赤ちゃんはまだ人の形になれないから、神様もイアフさんも気にも留めていないのね。今、紅妖狐の長である蘇芳さんに運命を辿るように仕向けているなら、あの子を一番に守ってあげな」  母の言葉に頷く。問題は山積みだ。  操られている暁も心配だが、意識も回復していない白翁も、神を殺すと宣言したイアフの言動も。  長い廊下を歩きながら、蘇芳を取り巻く運命とその運命を受け入れる蘇芳の種族を守りたい。自分に何ができるのか考える。  一番気になることは、運命を受け入れ運命の相手に白狼を選んだ蘇芳の気持ちだった。  相手は子のために選んだだけの相手だったろう。自分がここまで身勝手に動いて、困惑しているかもしれない。  華怜で無邪気で無垢、時折小悪魔のように人を翻弄させる。  運命を受け入れ、長としてその使命を全うしようとしている、アンバランスな人だ。  白狼の気持ちは複雑だった。渦巻く葛藤の中に、愛情はある。運命を抜きにすれば、心も綺麗な人で可愛らしいとも思う。  だからこそ触れられない。もっと自由な選択肢の中から自分を選んでほしかったと、気の小さな考えさえ過った。

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