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八章 九

「すまない」 「触って」 見上げながら、涙を溜めて蘇芳は縋った。 「触って。飲ませて。僕、胸も舐められた」  じわりと両目に涙を浮かばせ、顔に押し付けてくる。 「指も勝手に挿入された。僕の中に仮腹があるんだって」  尻尾を振りながら下半身も押し付けてくる。 「お腹の中に、熱いの欲しい」  自分からお尻を擦りつける。刺激をうけて白狼も前を硬くしていくが慌てて逃げる。 「駄目だ。君はヒナのせいで薬でおかしくなってるんだ」 「……意地悪しないで、ぇ」  白狼が距離を保とうとして逃げたのを、ぺたんと座り込んで蘇芳が泣き出す。 「嫌だ。暁さんじゃいやだ。白狼がいい。白狼がいいの」  両手で目を押さえ泣き出す。白い肌をそんなに擦れば腫らしてしまう。  そう思い、両手を掴むと甘い香りを放ちながら大きな目が白狼を捉えた。 「……白狼、白狼、はくろう」 「抱きしめる。だから落ち着け。だが、抱いてやれない。いいか?」  念を押す様に聞くと、蘇芳は目を閉じる。閉じた目から涙が零れ落ちた。 「抱かないのは、蘇芳さんを失いたくないからだ。それにこんな形で抱きたくない」  引き寄せる。胸の中に抱きとめると、折れてしまいそうな腰と軽くて艶めかしい体に喉が鳴った。 「……あんま僕を好きになったらダメだよ。気持ちよさそうだから抱いてやろうって、そんな簡単な気持ちでいいよ」 「蘇芳さん」 「僕が死んで、イアフさんみたいに白狼が壊れるのは嫌だし、泣くのも嫌だなあ」  蘇芳の尻尾が、自分を抱きしめる白狼の手に伸びる。巻き付くように尻尾は心を映すように離れようとしなかった。 「……蘇芳さん。もう手遅れだ。今失っても泣く。だから諦めてくれ」 抱きしめていた手を、肩に乗せる。そして顔を近づけると涙を舐め、唇を重ねた。 「……イアフさんを見たでしょ。あの人、本当に優しくて、兄さんを守るって自信に溢れていて、あったかい人だった。でも怖かった。今は、すごく怖い人だった」 「だから、蘇芳さんも怖くなって逃げたんですね」  白狼の言葉に素直に頷くと、自分から抱き着いて背中に手を伸ばす。 「白狼、こんなに熱くて硬くなってるのにどうしても僕を抱いてくれないの?」 「正直に言うと、それ以上体を密着されると理性が飛んでしまいそうだ」  ぎこちなく微笑むが、きっとその強張った顔は誰もが見た瞬間逃げ出してしまうだろう。 「だが蘇芳さんを失うぐらいなら、根元からきつく結んで絶対一滴も出さない」 「でも僕は触れてほしい」  赤い舌が、精一杯伸ばされて白狼の顎を舐めた。 「僕も諦めないって言ったら、気持ちよくしてくれる?」  首を傾げてねだる蘇芳に、カッと胸が熱くなる。 「さっきまで怖いと言っていた人の言うことだ。信じられない」 「好きなら信じて。……ただし失敗しても白狼が責任を独りで背負うのは嫌だ。無理なら諦めてくれる?」 「諦めない」

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