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九章 十二

「すまない。ドアに手を置いて、こちらに腰を突き出してもらっていいか」  そんな中でも白狼は白狼らしくて笑ってしまう。  突き出した腰をなぞられ、濡れてひくついた蕾に熱い舌が挿入された。  それと同時に胸を弄られ、降りてくる手が臍までそそり合った肉茎を掴むと上下に擦った。  いつもよりやや乱暴だったが、大きな手に包み込まれ、自分から腰を揺らして快感を全て搾り取ろうとしていたに違いない。  片手で器用に避妊具をつけた白狼に、振り返って蘇芳は見上げた。  ――ついに愛情で結ばれるんだね。  白狼の大きく硬い雄を受け入れる。その興奮に、先走りが畳の上に光って落ちていく。  が、白狼は蘇芳が脱いだ時に落とした帯を蘇芳の太腿をよせてぐるぐると巻いていく。 「え、ちょっと、白狼――」  言い終わらないうちに、白狼はきつく縛った太腿の間に肉茎を挿入させた。太腿に火傷し追うな熱が割って入るたびに身体は物足りなくて疼いて腰が揺れていく。  違い。貫いてほしいと必死に振り返って訴えても、キスで塞がれる。  代わりに高ぶった熱芯を強く乱暴に擦られ、太腿もだんだんと白狼の先走りで濡れて滑りやすくなっていくと腰に力が入らなくてずるずるとドアにもたれながら倒れていく。  倒れていく瞬間、親指で先端を強く弄られ簡単に精を放ってしまった。 「白狼、避妊しているんだからちゃんと奥にそそいでよ」 「運命に――抗ったあとだ」  白狼の口元から血が垂れる。白狼も中に注ぎたい欲望を歯を食いしばり耐えていた。  抱きしめて、指で舌で愛撫され、甘い口づけを交わす。  抱きしめられながら、蘇芳は悲しくて涙を一粒落とした。  最後だったから、貫いてほしかったのに、と。  優しい狼の、甘美で残酷な愛撫に身体は熱くなるが心はバラバラに割れそうなほど、痛んでいた。 

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