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十章 一
Side:大和白狼
「はくろ、う。はくろっ」
たどたどしく名を呼ぶ蘇芳を、愛しくて抱きつぶすかもしれないと怖くなった。
快感で目を蕩けさせ、体中どこを舐めても甘く惑わせる。名前を呼ばれるたびに理性を奪われそうになり、唇を噛み耐えた。
蘇芳は指で奥の内襞を押しつぶされるのが弱いらしい。二本入れて、中で左右に開くと前も触らずに、精を放って中を痙攣させながら絶頂を感じていた。
白くてほしい体。壊してしまわないか不安だったが、当の本人は壊しても構わないと言わんばかりに挑発してくる。いくら否認していても百パーセント安全なわけではない。
運命に抗うと決めたならその意思を貫き通したい。蘇芳がいくら求めても、まだ精を注ぐことだけは止めたかった。どれほど蘇芳が甘い香りを放っても、注いでほしいと誘惑してきても、必死に唇をかみしめて耐えた。
満月の妖気が充満した夜だった。時折子どもたちの笑う声や、お菓子をもらい騒ぐ声を聞きながら背徳の行為に溺れた。
ただ最後まで、蘇芳の純潔だけは汚さないように耐えた。
***
口の中が痛く、そして酷く鉄臭い。
右手首に手錠がかかっているのは白狼自身がしたことだが、なぜもう片方にドアノブがゆれているのか。
あたりを見渡せば、多分自分が破壊したであろうドアが倒れていて敷き布団のように敷いて眠っていた。手錠をしていて正解だった。頭がふわふわして、大量のお酒を飲んだような、一瞬気を許したら、意識を手放して本能で行動しそうになっていた。
「……蘇芳さん?」
最後までしなかったものの、何度も精を放ち身体を弄られ無理をさせたはずだ。蘇芳を探すが、あの夜、脱いだままの形で落ちた着物が散らばっている。
珊瑚は布団の上でまだ丸くなって眠っている。縁側の戸を開けながら、蘇芳を探すが見つからない。
疲れた体で風呂にでも入ったのかと思い、そちらに向かむいない。
気配すらなく、庭を歩き回ると門の前で倒れている佐奇森と黒曜を見つけた。
「大丈夫か?」
頬を叩くと、佐奇森の方がすぐに目を覚ました。
「すみません。これ」
手に握っていたのは、昨晩、蘇芳に自衛するように渡したペン型のスタンガンだった。
「蘇芳さんが、二人に?」
佐奇森は跪き、頷く。
「申し訳ありません。……余ったお菓子を家に持って帰りたいというので籠を持とうと背中を見せ、油断しました」
本来、蘇芳や白狼を守る役目だ。守る者から攻撃されるとは思わなかっただろう。
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