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十三章 十八
「でも白狼の尻尾は、嘘ついてないよ」
蘇芳がキスをねだった瞬間、大きく左右に揺れだした。
「……くそ。はやく尻尾を消し去りたい」
「えー。可愛いのに。ねえ、もっと」
「駄目だ。マリがいる」
泡を追いかけるのに夢中のマリの目を盗み、愛を囁いておきながら何を言うやら。
「マリがいるのにキスしてきたの、白狼だよね!?」
「わー!」
蘇芳が大声出すので、泡を追いかけていたマリが戻ってくる。
「どうしたの?」
「マリのお兄ちゃんが、僕に意地悪するの」
「していない」
泣き出しそうな顔の蘇芳と、焦って怖い顔の白狼を交互に見てマリが白狼を睨んだ。
「めっ。ママに言うよ」
「だから」
「白狼がね、お皿洗ったご褒美にちゅってしてくれないんだ」
「おにいちゃん、さいていーっ 代わりにマリがしてあげるね」
蘇芳がマリを抱きかかえると、頬に何度もキスをしてくる。 可愛い唇が触れる度に柔らかい感触が当たり気持ちがいい。
「――マリは可愛いね。良い子だ」
「でしょう」
マリは、暁の父親が迎えに来た。暁が居るから帰らないと叫ぶマリを連れ、白山のレストランでパフェを食べに行くらしい。
二人を見送りながら、蘇芳の尻尾がブンブンと止まらない。
「女の子って可愛いねえ。いいなあ」
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