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第2話
一族が狭い社会で生きていくための協力者である学園の理事長に、つい疑問が口をついて出た。
「――魔法、信じるんですね」
きょとん、、と琥珀の瞳を瞬かせた理事長は、ついで恥ずかしそうに頬を掻いた。
「ふふっ、はしゃぎすぎちゃったかな。魔法使いなんて初めてだから、ずっと会えるのを楽しみにしていたんだよ。――それに、僕の生家もね、ちょっとだけ特殊だからそういうのには理解はあるよ」
世間一般じゃ魔法使いなんて非現実的存在だ。魔法使です、と言って信じる方が可笑しい。
四時限目からクラスに参加で、それまでは理事長室で時間を潰す予定だ。暇なのかな、理事長って。
学園について何も知らない氷織に、理事長は疑問ひとつひとつに丁寧に教えてくれる。
「ところで、神楽坂君は目が悪いのかな? 随分と大きくて分厚い眼鏡だけど」
指摘されて、顔の半分を隠しっている丸眼鏡に触れた。
「いえ、伊達です。髪色は変えられても、目の色は変えられないので」
「なんだか魔法使いも大変なんだねぇ」
心配性の兄がどうしてもつけなさいと言うからかけているだけで、視力は右も左も2.0だ。
外して見せれば、微妙な表情で「確かに、眼鏡はあったほうがいいね」と頷かれてしまった。そんなに見れない顔をしてはいないと思っていたのだが。
「失礼します。理事長、編入生は――」
つい、話し込んでいた。
壁にかけられた時計を見れば、優に一時間を超えている。会話を楽しむ趣味はないが、話ていてとても楽しい人だった。
「神楽坂君の担任教師の宮野先生。とても優しい先生だから、困ったことがあれば何でも聞くといいよ。あ、もちろん、僕に聞きにきてもいいからね」
理事長の言葉に口をへの字にした先生が本当に頼りになるのだろうか。
「暇なときにでも、理事長室においで。美味しいお茶とお菓子を用意しておくよ」
綺麗な理事長先生に見送られて、静かな廊下へと足を踏み出した。
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