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第4話

 ピンポーン、とインターホンが鳴った。  ダンボールの積み重なった部屋を片付けるのに邪魔だからと、テーブルに放っていた眼鏡をかけて、玄関へ向かう。  玄関まで来れば、賑やかな声がかすかに聞こえた。 「よっ! 夕飯のお誘いに来たぜ!」  にこやかに笑う茶髪と、苦笑いの黒髪と、下がり眉の小柄な三人。 「……誰?」  こてん、と首を傾げた。 「まぁ、自己紹介もしていないからね。クラスメイトの立花真二(たちばなしんじ)だ」 「外﨑圭(とのさきけい)! んで、こっちの小さいのが、」 「は、早水誠(はやみまこと)です。よろしくね」  随分と押しの強いトリオである。 「Cクラスの委員長として、先生に面倒を見てやれって言われたんだ。まぁ、言われなくっても仲良くしたいと思ってたんだけどさ! 食堂の場所、分かんないだろ?」  言われてみれば、愛想の良い彼はホームルームで前に立っていた顔だ。  善意を全面に押し出してくる面倒みの良い委員長。苦手なタイプだ。  善意だから何をしても許されると、無意識に思い込んでいる人間が一番面倒で厄介だ。  生霊を飛ばすタイプにこういう輩が多い。  ◇ ◇ ◇  食堂は学生寮と講堂の二箇所にある。  七時から十六時までは講堂の食堂を使い、それ以降は寮の食堂を使う決まりだ。  本当なら、敷地内の地図を頭に入れてから転入するはずだったのに、夏の体調不良が長引いてしまったせいだ。  こんなはずじゃなかった、溜め息が溢れてしまう。 「溜め息吐くと、幸せが逃げちゃうよ」  きゅるん、とまぁるい目を瞬かせた早水に口をへの字にする。 「逃げてった幸せが、ほんとの幸せとは限らないでしょ」  険を帯びた声音に会話が止まった。  やっちゃった。気まずくなる。けど訂正するつもりもない。 「食堂って混むの?」 「え、えー……まぁ、時間帯によるけど、今だったらとょっと早いし、そんなに混んでないと思うよ」  気まずい雰囲気に困りながら、ちゃんと答えてくれる立花は喧しい外﨑よりも頼りになりそうだ。  この三人じゃ、彼が一番マシに思えた。

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