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第6話
「C組の編入生って君!?」
まるで天使と見まごう紅顔の美少年だった。
くすんだ蜂蜜色の髪と瞳。まろい頬に、大きな瞳がきらきらと輝いている。
「誰」
生徒会御一行の先頭を歩いていた美少年。名前も知らない彼に、ぞわぞわと肌が粟立ち、嫌な予感がする。
「おれは神逆愛優 ! 君の名前は?」
満面の笑み、花を咲かせた愛優に、頬が引き攣る。――嫌な予感、大当たりだ。
きちんと名乗れただろうか。舌の奥が痺れる感覚に、背筋を冷や汗が伝う。
”神逆”とは、神楽坂の一族から勘当された人間に与えられる名だ。
「おれも夏に編入してきたばっかりなんだ。クラスは違うけど、仲良くしよう!」
「あゆちゃん、こんなもっさいのと仲良くすんの?」
「えー、あゆちゃんにこんなもっさいの似合わねーよ」
「もう、二人とも! そんなこと行ったらいけないだろ! ごめんな、悪気があって言っているわけじゃないんだ」
差し出された手を、とっても拒否したい。できることなら叩き落したいが、愛優の後ろから睨みを利かせてくる奴らが怖い。
瓜二つの兄弟が両脇から顔を出した。
神楽坂と神逆が仲良く? ありえないだろ。手を取り合って仲良くするなんて、想像もつなかい。
神楽坂、と聞いて愛優は疑問すら抱いていない様子だ。神楽坂という存在自体を知らないのか、そうであれば少しだけ緊張がほぐれ、ほっと胸を撫で下ろした。
「あ、そうだ、ほら、皆も自己紹介――」
「え、いらない」
「えっ」
生徒会に注目していた周囲がしんと静まり返る。
きょとん、と目を丸くする愛優は「なんで?」と首を傾げた。
「仲良くするつもりも、近づくつもりもないから必要ない。そもそもクラスが違えばそうそう話すこともないだろ」
友人を作るつもりなんてない。
なにより、「神逆の子と友人になった!」なんて家の人間に知られたらどんなことになるやら。
怒髪天で済めばよいが、折檻されるのが目に見えている。
「俺は、君と友達にならない」
やけに静かな食堂に、氷のように冷たい声が響いた。
「やだ! 友達になる! 仲良くしたい~!!」と子供みたいに駄々をこねる愛優を連れて行った生徒会には感謝した。
あのまま甲高い声で喚き散らされていたらどうしてやろうかと思った。魔法が飛び出していたかもしれない。
「おまたせ! って、なにこの暗い雰囲気」
やっと戻ってきた外﨑は、ついさきほどの嵐なんて知るはずもなく目を瞬かせる。
「あー……明日から神楽坂が大変だな、って」
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