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第7話

 ――立花の言っていた通り、次の日から大変だった。 「ヒオリ! 一緒にご飯食べよう!」 「寮まで一緒に帰るぞ、ヒオリ!」 「あ、ヒオリ!」 「ヒオリ~!」  朝から、寮に帰るまで、氷織、氷織、ひおり氷織ヒオリ! ノイローゼになりそうだ。  授業中にも関わらずクラスにやってきたときなんてつい怒鳴ってしまった。その後のクラスの雰囲気なんて最悪だ。  目立たず、平凡に、何事もなく過ごすはずの学校生活がさっそく崩れている。いつか反射で愛優を氷漬けにしてしまいそうだった。  ――愛優だけじゃない。愛優に絡まれるようになってから、嫌がらせが増えつつあった。  陰口や靴を隠されたり、わざと体当たりをされたり。面倒くさいことこの上ない。  こんなことになるのなら大人しく友達(仮)になっておけばよかったと後悔する。 「神楽坂、昼はどうする?」 「購買に行く」 「りょーかい。圭と誠は委員会だって」  良かったことと言えば、話しかけてくるクラスメイトがいなくなったことだ。嫌がらせに巻き込まれたくない、が大半だろう。  変わらずに話をするのはいつもの三人組。教室移動のときや、隙間時間に何気なく声をかけてくる。  あれもこれも、と教えてくれる外﨑にはうんざりするが、誰かと一緒にいるときは嫌がらせされないことにも気づいた。あぁ、だから一緒にいてくれるのか、とも。  教室を出て、十数秒歩いた先にあるトイレへ行くのだって「あ、ついでに俺も」とついてくる。女子かよ、と笑ってしまった。  ◇ ◇ ◇  昼休み前の歴史の授業は眠くなる。雑談する聖とも居らず、静かな教室内番所の音が響く。  教科書を読み上げる先生の抑揚のない声はことさらに眠気を誘った。  大事なところは赤、他は黑のボールペンで黒板を写しながら、溢れそうになったあくびをかぷりと飲みこむ。 「ひーおーり! 自習になったから来ちゃった!」  授業中だというのにも関わらず、勢いよくドアを開け、賑やかにやってきた嵐に深く深く溜め息を吐いた。以前、怒鳴ったのを覚えていないのだろうか。  てへ、と語尾に星マークでもつきそうなテンションにうんざりする。  決して反応せず、黒板を見続ける。 「なぁなぁヒオリ! これから生徒会室に行くんだ。一緒に行こう?」  可愛い顔に笑顔を浮かべ、入り口から何度も呼びかけられる。  ペンを握る手がぎりぎりと震えた。  ぴーちくぱーちくと囀る小鳥に授業はストップしている。 「……はあ、神楽坂君、出席扱いにするので行ってきなさい」  だと思いました、先生!

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